なぜ村田諒太は王座陥落したのか。封じられた“三種の神器”
WBA世界ミドル級タイトルマッチが20日(日本時間21日)、米国ラスベガスのパークシアターで行われ、王者の村田諒太(32、帝拳)が指名挑戦者の同級3位、ロブ・ブラント(28、米国)に、0-3(110-118、109-119、109-119)の大差判定で敗れ2度目の防衛に失敗、王座から陥落した。ブラントに研究されていた村田は、得意の右ストレートをシャットアウトされて堅いブロックを打ち破られ、最初から最後まで試合を支配された。戦前、圧倒的に優位とされていた村田は、なぜ敗れたのか。
破られた攻撃的ブロック
スタートから異常だった。 序盤はブロックを固めて、プレッシャーをかけながら、静かに相手のスピード、軌道、リズム、タイミングを察知するのが村田のスタイル。だが、そのプレスが効かない。ブラントのスピードと、アクセル全開の圧倒的な手数でブロックをこじあけられた。コーナーに戻ると、もう村田の顔は腫れていた。 集中力に欠いたように反応が鈍く体が重たく見えた。 ラスベガスでの試合は初めてではない。会場には村田コールとUSAコールが交錯。決して完全アウェーの雰囲気でもなかった。笑っていたのも、何かの違和感を感じていたせいかもしれなかった。 元WBA世界Sフライ級王者の飯田覚士氏は、コンディション不良を指摘した。 「緊張なのか、それとも体調が悪かったのか。動きが硬かった。下半身が使えずに腰が浮いてしまっていた。そこにブラントは、軽いパンチを1、2、3発打って、ブロックの隙間をみつけて、そこに2、3発、またスピードだけを意識したパンチを狙ってきた。少し下から突き上げるように打つので、下半身の安定していない村田は上体がのけぞるようになってパンチを浴びてしまった」 村田の堅固なブロックは、相手のパンチに合わせて微妙に動かすのが特徴。待つのではなく攻める攻撃的ブロックなのだ。だからパンチをもらわないし、プレスがかかる。 だが、この日の村田のブロックは、動いていなかった。「思ったより速かった」という挑戦者に対して、突っ立った姿勢となり、受けに回ってしまっていたのだ。 2ラウンド、3ラウンドと、ブラントの超ハイペースは続き、村田は鼻血を出し、3ラウンド終了後には、もう氷が用意され、左目に当てられた。 現状を打破したい村田は、強引に右ストレートを打つが、ことごとく、シャットアウトされた。挑戦者のステップワークと上体のスウェー。そしてブロック。 しかも、ブロックで右が止められた後には、必ず3連発の返礼を受ける。1対3の数式が重なって、3分間が埋まっていく。ポイントゲームならパンチの数で勝てるはずがない。 村田は、何度も得意のボディを絡めるコンビネーションからペースを奪い返そうとするが、そのボディさえもブラントの巧みなボディワークで外された。 飯田氏は、必殺の右が当たらなかった理由と、ボディが効果打にならなかった理由をこう分析した。