ぐっすり眠って、しっかり「休息」のスタンダード(専門家が監修)
寝る前の過ごし方にもひと工夫する
トレーニングでかいた汗を洗い流したら、湯船に浸かって今日の疲れを癒やす。これもリカバリーの一つ。 「40度程度の湯に汗ばむまで入ることで、深部体温が上がります」 そこから深部体温が下がる際にリラックスモードに切り替わり、眠りの森への扉が開く。安眠への突破口としておなじみのサウナもあり? 「もちろん。すでに十分な汗をかいているので、脱水症状を防ぐためにも水分補給を忘れずに。いずれも就寝の1時間前には出ましょう」 骨の髄までほぐされて帰宅。眠りに就くまでのくつろぎタイムでは、部屋の照明にも気を配ろう。 「明るい光を浴びると、目が冴えてしまいます。休息モードをキープするために、家全体の照明の照度を下げましょう」 当然スマホはNG? 「ブルーライトについては部屋の照明のほうが有害です。自身にとって、眠りを誘うコンテンツならば、我慢せずともよいと思いますよ」
ノンレム睡眠とレム睡眠、両方を大切にする
私たちは睡眠中に2つのサイクルを繰り返している。入眠後すぐに訪れるノンレム睡眠と、明け方に増えるレム睡眠だ。質のいい筋肉を育むには、前者を十分に確保すればひとまずOKなのだろうか。 「そうとも言い切れません。もちろんノンレム睡眠はリカバリーに重要ですが、運動のパフォーマンスを上げるうえではレム睡眠も大事な役割があります。レム睡眠の間にも脳内の記憶が整理され、また運動する時に必要な技能を覚えさせています」 取り組んだメニューをいつしか覚えているのは、レム睡眠の賜物だ。 「ただしサイクルはコントロールできません。両方を重視するためにできることは時間の確保に尽きます」
Q ワークアウト後に昼寝をしてもいいですか?
「20分以内であればいいです。ノンレム睡眠のN2に達するのがこの時間となるので、ここまではパッと起きられる。N3まで進むと目覚めてもしばらくボーッとするので逆効果。直前にコーヒーを飲むとカフェインが吸収される時間帯と重なり、起きやすくなるかもしれません。そもそも昼間に眠いのは睡眠不足の証拠です」
Q トレーニングをした日によく眠れるのはなぜ?
「疲れているからです。カラダを動かした分だけ睡眠欲求は高くなります。寝室の環境や体調などトレーニングをしていない日と同じ条件での眠りを比べると、その差は歴然です。ただ、具体的なメカニズムは解明されておらず、研究中です。筋トレは不眠の解消にもつながり、良い睡眠に近づく第一歩とも言えるでしょう」
取材・文/松岡真子 編集/門上奈央(初出『Tarzan』No.872・2024年1月25日発売)