「それってSHEINに限った話なんですか?」強制労働、デザイン模倣疑惑…それでも世界を席巻する中国発の激安アパレル通販
ファッションブランドの旗艦店や個性豊かな雑貨店がひしめく東京の「裏原宿」の一角。「SHEIN」の看板が掲げられた店舗に、慶応大の男子大学生3人の姿があった。Tシャツが400円、アクセサリーは500円。どの商品も圧倒的に安い。小林剛大さん(19)は「店舗は女性服だけかと思っていたが、メンズ用の商品も置いてあって良かった。じっくり見られる」と笑顔だ。 【写真】中国企業に買われた「東芝ブランド」その後 19年
SHEINはシーインと読む。激安アパレルで世界市場を席巻している中国発のネット通販企業だ。だが、運営会社の社名や業績などは明らかにされておらず、企業実態は謎に包まれている。成長の裏で強制労働やデザイン模倣の疑惑が付きまとうが、小林さんと一緒に訪れた佐藤智哉さん(19)は意に介さず、そういった疑惑を理由に購入をやめる人は少ないだろうとの見方を示す。「強制労働や他のデザインをまねた話はX(旧ツイッター)でよく見かけるけど、それってシーインに限った話なんですか?」(共同通信=小林笙子) ▽インフルエンサーが紹介し、Z世代に浸透 6月上旬、シーインの店舗を訪れると、客足はまばらながら、若者だけでなく中高年の姿も見られた。店内には衣料品のほかに靴やスマートフォンケースといった雑貨が並ぶ。小林さんによると、米ネット通販大手のアマゾンやディスカウントストア大手のドン・キホーテなどと比べて価格の安さが際立っていることがシーインを選ぶ決め手になっているという。小林さんはサンタクロースのコスプレ衣装といったパーティーグッズの購入でも利用するといい「1回きりで使い終わるものでも気軽に購入できるので便利」と話す。
ただ、この裏原宿の店舗は「ショールーミング型」と呼ばれる形態で決済用のレジがなく、商品をその場で購入して持ち帰ることはできない。来店客は商品の実物に触れて素材やサイズ感を確認し、購入する場合は商品のタグにあるQRコードをスマートフォンで読み込み、インターネットで注文する仕組みだ。商品は後日、自宅に配送される。 シーインが急成長したのは、米国で1990年代半ば以降に生まれた「Z世代」と呼ばれる若者たちに浸透したのがきっかけだ。人気に火が付いたのは、SNSで多数のフォロワーを抱えるインフルエンサーの存在が大きい。インフルエンサーが自身のインスタグラムや動画投稿サイトのTikTok(ティックトック)で購入した商品や洋服の着回し方法を紹介すると、フォロワーの購入につながるという。 ▽ファーストリテイリングは販売停止を求めて提訴 SNSでは、シーインの製造現場を問題視する声もたびたび取り沙汰されている。中国の縫製工場で作業員がほぼ毎日12時間の労働に従事しているといった疑いが浮上し、シーイン側が「申し立てがあった縫製工場で定休日の体制が整っていないことが分かり、状況を是正するように指示した」と釈明したケースもあった。ほかにも、人権弾圧が指摘される中国新疆ウイグル自治区の綿を使った商品を米国に輸出していると一部で報じられている。