「原子」と「元素」は何が違うんだっけ…?大人も意外と知らない「決定的な違い」
138億年前、点にも満たない極小のエネルギーの塊からこの宇宙は誕生した。そこから物質、地球、生命が生まれ、私たちの存在に至る。しかし、ふと冷静になって考えると、誰も見たことがない「宇宙の起源」をどのように解明するというのか、という疑問がわかないだろうか? 【写真】いったい、どのようにこの世界はできたのか…「宇宙の起源」に迫る 本連載では、第一線の研究者たちが基礎から最先端までを徹底的に解説した『宇宙と物質の起源』より、宇宙の大いなる謎解きにご案内しよう。 *本記事は、高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所・編『宇宙と物質の起源「見えない世界」を理解する』(ブルーバックス)を抜粋・再編集したものです。
ものの個性は「原子」で決まる
素粒子のことを考えると、もはや最も基本的な存在とは呼べそうもない原子ですが、それでも原子は重要です。というのも、ものが原子よりも細かくなると、ものとしての個性を失います。原子の種類によって、重さや他の原子とのくっつきやすさ、壊れやすさ、沸点・融点などといった性質が変わってきます。ものを燃やす酸素やかたい鉄といった性質を決めているのは、原子です。原子に現れる性質によって分子がつくられ、化学反応を起こすようになり、私たちの体や身の回りのものになっていきます。 ですから、原子がものの基本的な単位であるというのは間違いではありません。私たちになじみのある性質が現れるのが原子という単位からで、私たちの目に触れるすべてのものは118種類の原子の組み合わせなのです。 118種類の原子は、性質が似ているいくつかのグループに分けることができます。原子をグループ別にまとめたものが「周期表」です。 原子を重さが小さなものから順番に見ていくと、似たような性質のものが周期的に現れることから、そう呼ばれています。
電子のふるまいは、まるで「かごめかごめ」!?
この周期を生み出すもとになっているのが、それぞれの原子をつくっている電子の配置です。原子の中では原子核を中心にして、いくつかの電子が何重にも取り囲んで回っています。子供の遊び「かごめかごめ」は一重の輪をつくるだけですが、原子の中では電子が何重もの輪をつくって、「かごめかごめ」をやっているようなものです。 一番外側の輪(最外殻)を回っている電子の数が、原子の化学的な性質に大きく関わっています。一番外側の輪を回っている電子を「価電子」と呼び、その数が同じ原子同士は似たような化学的性質をもつようになります。周期表では縦の列に似ているものが並ぶように配置されているので、縦のグループにどのような原子があるのかが重要です。周期表の縦の列を「族」と呼びます。 周期表の一番左の列に位置する水素やナトリウムなどが属する第1族は、価電子が1個しかなく、電子は他の原子に移りたがります(「図:原子の電子配置図」)。 逆に、右の方の列に位置するフッ素や塩素が属する第17族の原子は、電子があと1個入ってくれれば一番外側の輪を満員にできるので、なんとか満員にしようと、他の原子から電子を引っぱり込もうとします。 このように、ある原子では電子が他の原子に移りたがり、別の原子では電子を入れたがっています。このような原子たちが出会い、電子をやり取りすることで化学反応が起きます。だから、周期表を見るだけで、その原子がどのような化学的性質をもつかがわかるのです。