紫式部と清少納言が最終回まで…クリエイター大河だった「光る君へ」 ついに登場した〝めぐりあひて〟
推しの清少納言が「受肉化」された感情
水野:いま、放送の1年を振り返ってみてどうですか? たらればさん:平安時代の宮中が舞台となる大河ドラマは初めてだったので……「あぁ、自分がこんな気分になるんだ……」というのが人生勉強になりました(笑)。 これまで、自分の推し・清少納言が大々的に受肉化して世の中にこんなに広まることはなかったわけです。まさか大河ドラマで、それをリアルタイムで見られて、という。こんなに情緒がかき乱されるんだ、というのは新鮮でした(笑)。 水野:紫式部の大河ドラマで、清少納言が最終回まで出てくるというのは、改めてふたりの才能が宮中に及ぼした影響が大きかったんだと思います。 たらればさん:改めて「クリエイター大河」だったんだな、という印象を強くしました。 NHK大河ドラマで「作家が主人公」というのは初めてだったと思うんですけど、「この頃、文化は政治と同じぐらい重要だった」という取り上げられ方もありがたかったし、印象深かったです。
最終回に登場した歌「めぐりあひて」
水野:最終回でようやく、紫式部の歌「めぐりあひて」が出てきましたね。 たらればさん:もしかして出ないのかな、って思ってましたけど最後の最後に出ましたね。 <めぐりあひて 見しやそれとも わかぬまに 雲隠れにし 夜半の月かな> <たらればさん訳/幼馴染のあなたと久しぶりに会えたのに、短い時間であっという間に帰ってしまいました。まるで雲に隠れた夜の月のようでした> たらればさん:『紫式部集』の巻頭歌で、百人一首にも入っている紫式部の代表的な歌です。詞書(ことばがき)には、「幼友達に久しぶりに会って読みました」と書かれています。 『紫式部集』巻頭歌詞書:「はやくよりわらはともだちに侍りける人の、としごろへてゆきあひたる、ほのかにて、七月十日の比、月にきほひてかへり侍りければ」 <たらればさん訳/幼い頃から仲良くしていた友達と久しぶりに行き合ったのだけど、ほんのわずかしか会えず別れてしまった…、あれは七月十日頃の、あたかも一瞬だけ見えた月がすぐ雲に隠れてしまった時のように> ドラマでは、賢子に手渡した紙束(『紫式部集』?)に詞書が写っていましたが、そのとおりに書かれていましたね。 水野:この「幼友達」は、ドラマでは道長のことを思って詠んだ、ということでしょうか。 たらればさん:どうでしょうか。道長にとっては「幼友達」扱いというのは悲しいと思いますが(笑)。 これを道長のことにするというのは、九つの時に出会っているというドラマの新しい解釈ですよね。うまい作り込みだなと思いました。 水野:リスナーさんから、賢子に道長のことと分からないように「幼友達」としたのかなというリプもありました。