「子どもの偏食」、育て方より「遺伝」の影響大? 調査結果
食べ物の好き嫌いがなく、ほとんど何でも食べる人もいる。一方、えり好みをする「偏食」の人もいる。そうした傾向は遺伝的な特徴であるのか、環境が影響を及ぼすものであるのかを明らかにするため、英国で行われていた研究の結果が発表された。 Journal of Child Psychology and Psychiatryに掲載された論文によると、風味や食感の好みがはっきりしているため特定の食品しか食べない、または食べたことがないものを避けたがる偏食は、一般的にみられる傾向であり、大抵は成長段階の早い時期(幼児期)から確認される。「偏食率」は、6~50%だという。 過去の研究では、大半の子どもは思春期になるころにはあまり好き嫌いを言わなくなるものの、中には成人になっても変わらず偏食の人がいることが確認されている。それに加え、新たに公表された論文の著者らは、「食べ物の好き嫌いは、その人が完全にコントロールできるものではないと考えられる」と指摘している。 ■「親の責任」ではない 研究チームは偏食の根本的な原因が主に環境と遺伝のどちらにあるのかについて調べるため、英国で2007年に誕生した2400組の双子とその両親を対象にアンケート調査を実施。子どもが生後16カ月から13歳になるまで、追跡調査を継続した。 その結果、子どもの食行動の形成には遺伝的な影響の方が大きいことが確認できたという。そのため、介入による食の好みの変更は困難だとしている。ただ、より強く影響するものは成長の段階によって変化しており、最も早い時期においては環境の影響が強くなるとみられることから、その段階で「より対象を絞り込み、個人に合わせた、集中的な介入を行うことが必要になる」という。 そのほか研究チームは、子どもの偏食について、「親の責任を問うべきではない」と訴えている。論文の筆頭著者、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)疫学・ヘルスケア研究所のゼイネップ・ナス博士は、「偏食は主に、生まれ持った性質に影響を受けたものであると明らかにしたこの研究結果が、好き嫌いは親の責任だとする見方をなくすことにつながればと願っています」と述べている。 ■それでも「克服」が望ましい この研究結果はそのほか、偏食は成長過程における「一時的なもの」ではなく、その後も維持される場合もあることを明らかにしている。だが、同時にナス博士と研究チームは、「子どもの偏食をなくすために、できることが何もないわけではない」と強調する。 健康的な食習慣のために必要なのは、結局のところ、野菜や果物、豆類その他のタンパク質を多く含む食品を、幅広く摂取することだ。子どもが十分な栄養を取ることを妨げないためには、偏食への対応は小児期から思春期まで、やはり必要なものとなる。 博士は、「調査結果が示すのは、好き嫌いが激しい幼児は成長しても、偏食がさらに進む可能性が高いということです。これは研究者だけではなく、臨床医や、子どもたちの健康増進を支援する医療コミュニティーにとっての関心事です」と述べている。 また、偏食とその他の身体的、あるいは精神的な健康問題(回避・制限性食物摂取症:ARFIDを含む摂食障害)などは関連しており、こうした行動の発現は、「幼児期における偏食の問題への介入により、避けることが可能になると考えられる」という。
Anuradha Varanasi