ソフトバンク・和田毅の引退会見のジェントルマンな振る舞い
【球界ここだけの話】球界のジェントルマンが惜しまれつつユニホームを脱いだ。日米通算165勝のソフトバンク・和田毅投手(43)が日本シリーズ2日後に22年目の今季限りでの現役引退を表明。11月5日に、みずほペイペイドームで開いた引退会見ではとっさの振る舞いに人柄がにじみ出た。 「ありがとう」 その言葉を発したのはテレビ会見途中で早大の後輩・有原航平や自主トレ仲間の東浜巨、藤井皓哉らゆかりのある総勢13人がサプライズで登場した時のこと。壇上の和田は一人一人から花束を受け取ると、一人一人の目を見て感謝を口にした。 和田は1年目の2003年に14勝で新人王に輝き、日本シリーズで胴上げ投手となった。8年目の10年には17勝で最多勝&MVP、米球界から復帰1年目の16年には15勝5敗で最多勝と勝率第1位を獲得した。ストイックな姿勢や140キロ台の直球で三振を奪う投球術は若手投手から尊敬を集め、毎年1月に長崎で開催する〝和田塾〟と呼ばれる合同自主トレーニングの球団の垣根を越えて集まる。 チームを先頭で引っ張ったホークスの顔であるが「若い頃はアメリカに行くことしか考えていなかった」と振り返る。転機は12年から4年間の米大リーグ挑戦であると明かし「どちらかというとマイナーにいる時間が長かった。ファームで頑張っている子や裏方さんの気持ちを直に知ることができた」と実感を込める。 ソフトバンクは1軍から4軍まである。会見終盤に報道陣から「ホークスの若手に伝えたいこと」という質問が飛んだ。和田は少し間を置くと両手に抱えた花束を見つめ、こう言った。 「一日一日、悔いなく過ごしてほしい。自分から辞めると言える、たくさんのお花をいただけるのは特別なこと。やり切ったと胸を張れる選手になってほしい」 指導者として古巣のユニホームを着ることが期待される。今後については「まずはゆっくりしたい」。いったんはグラウンドの外から若鷹の〝開花〟を見守る。(柏村翔)