京口が最軽量のコンプレックスをバネに日本最速世界王者
京口は両手で観客を鼓舞して10ラウンドに向かったが、メキシコ人も意地の反撃。 「左のロングフックは的確な角度で顎に入った。だが、次の回にはダメージは回復したんだ」 息を吹き返し、左右のフックを振り回してくる。京口はフィニッシュタイムを作ることができない。京口が再現したいと、試合前に語った辰吉対シリモンコンのタイトル戦でも絶対絶命だったシリモンコンが途中、決死の思いで盛り返したが、その姿がアルグメドに重なった。 インターバルに井上孝志トレーナーの大声が響いた。 「このままのペースでいけ! 世界王者になるんだろ? わかったか。最後見せてみろ!」 京口は、京口で冷静にポイントを読んでいた。 「シーソーゲーム。ブロックの上からでも、打った手数を取るのか、直接当たったパンチを取るのか(ジャッジの)好みが出ると思った」 計算した上で、「KOで世界王者になると言っていましたからね。最後まで狙わないと」と前へ出た。 最終ラウンド。揉みあい、押し合いの乱打戦となっても、ひるまず前へ。突っ込んでいく京口は、勢い余ってスリップで3度、倒れるほどだった。京口はガッツポーズ。王者は喜びを表現しなかった。 渡辺会長の胸には「負けたかと思った。世界戦はまだ早かったかなとも」と、不安が走り、一方の王者も「僕の見立てはドロー」と、勝利への確信はなかった。 アメリカ、プエルトリコ、日本の3か国で形成されたジャッジは、いずれも京口を支持した。2者が116-111、一者が115-112。3-0のユナニマス・デシジョン。「ニューチャンピオン!」のアナウンスを聞いた瞬間、京口は泣いた。何かに納得するかのように、うんうんと、うなずきながら泣いた 「しょうもない試合をしてすみません。最速記録に特別な思いはありませんが、チャンピオンになれたことが素直に嬉しい」 中学生の頃に通っていた大阪帝拳時代に教えを請うた辰吉に、どう報告するのかと話が及ぶと、「もっと練習しろ!と怒られると思う」と、右頬を大きく腫らした顔で反省を口にした。 一方、敗れた王者は、綺麗な顔をしていた。 「京口はタフでパワフルだが、ダウンがなければ負けていなかった。日本だしKOでなければ勝てないと思っていたが、今日は最悪の夜になった。リベンジを求めたい」 そう強がった。