京口が最軽量のコンプレックスをバネに日本最速世界王者
プロボクシングのダブル世界戦が23日、大田区総合体育館で行われ、IBF世界ミニマム級タイトルマッチでは、同級9位の挑戦者、京口紘人(23、ワタナベ)が3-0の判定で王者のホセ・アルグメド(28、メキシコ)を下して、世界初挑戦で王座を手にした。京口は、王者の超変則スタイルのボクシングに苦しんだが、我慢のボクシングを続けて9回には左のロングフックから右のショートでダウンを奪いKO寸前にまで追い込んでいた。プロデビュー後、わずか15か月での戴冠は、WBO世界Sフライ級王者、井上尚弥(大橋)、WB0世界ライトフライ級王者の田中恒成(畑中)の持っていた19か月を超えて日本最速記録となった。 またWBA世界ライトフライ級王者の田口良一(30、ワタナベ)は、同級1位のロベルト・バレラ(24、コロンビア)を9回24秒TKOで下して6度目の防衛に成功した。リング上には田中恒成(畑中)が上がり統一戦をアピール。田中が、9月13日の防衛戦をクリアすれば、いよいよ年末にも日本人同士の2団体のタイトル統一戦が現実のものになりそうだ。
ワタナベジムの偉大な先輩、元WBA世界Sフェザー級王者の内山高志が会見途中の京口を祝福した。 「相手は強かったな。打たれ強く、パンチもあり、スタミナもあった。そんな相手に(勝てて)良かったよ。さすが、ダイナマイトボーイだ!」 元祖KOダイナマイトが、ダイナマイトボーイを持ち上げると、京口は「内山さんのようなワンツーが打てませんでした。また教えて下さい」と両手を差し出した。 我慢を強いられた。 「想像のレベルは超えていなかったけれど、アッパーも見えにくく、やりにくさがあった」 序盤は、スイッチを繰り返しながら、超変則で、ハリケーンのようにどこからともなく浴びせてくるパンチの手数に圧倒された。堅いブロックでパンチの芯を外しながら、左ボディ、右を合わせるしかなかった。 特にパンチと同時に飛んでくる頭に悩まされた。 一昨年前の大晦日に負傷判定でアルグメドにベルトを奪われた前王者の高山勝成からは「頭とパンチが同時の来るので気をつけて!」と、アドバイスを受けていたが、中盤に右の拳を痛めたことも手伝って、メキシカンのペースに巻き込まれた。だが、7ラウンドに元WBC世界バンタム級王者、辰吉丈一郎直伝の左右ボディを相手のパンチの打ち終わりに炸裂させ、右のフックにつなげると明らかに流れが変わった。 「左のボディには何発か息が止まった」 嫌がる王者が、距離をとり、思い切り殴るようなパンチが出なくなった。 ジャッジの3人が支持した7、8ラウンドのボディ攻撃が布石となって9ラウンドを迎えた。 「下にフェイントをかけると、ロングと、返しのショートもあたるかなと思った」 京口の読みどおり、ボディを過剰に嫌がる王者は「腹を打つぞ」のフェイントでガードを下げた。 そこにロングの左フック。さらにダブルでもう一発左をかぶせると、王者はロープを背負ってよろけた。腰が砕けた王者は、なんとかクリンチに逃れようと絡んできたが、そこに右のショートをヒットさせ、ついにダウン。京口は両拳を突き上げて雄叫びをあげた。 ロープをつたい、ふらふらになって立ち上がったアルグメドに襲い掛かる。右のフックでバランスを崩した瞬間に、アルグメドの右のグローブがキャンバスについたように見えたが、レフェリーはダウンをとらなかった。京口の渾身の右ストレートもヒットしたが、王者はゴングに救われてプライドを守った。