「この棒振り野郎!」と罵られることも…現場は高齢者ばかりという「警備員」のリアル「トイレに行けないので膀胱炎率は高い」
安すぎる給料
他のブルーカラー職種の状況に違わず、現在、警備業界でも「人手不足」と「低賃金」が深刻化している――こう書くと「人手不足で売り手市場ならば、給料は上がるのでは」と聞かれることがよくあるのだが、ブルーカラーの多くの現場では、「ただ単純に人が足りていない」のではなく「低賃金で働いてくれる人手」が足りていない状況にある。 つまり発注者側が工賃を上げ、雇用者が給料を上げない限り、人手不足は絶対になくならないのだ。 「交通警備員の単価は安すぎます。家族なんて養える状況にない。これは、発注元である国や地方公共団体の単価設定に問題があると思います」 総務省「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、「きまって支給する現金給与額」は27万9800円。しかもこれは従業員が10人以上の1~4号の警備業務を担う企業を合わせた平均額だ。 3、4号警備についてはまた回を改めて仕事内容を紹介するとして、本稿ではこれ以降、「施設の警備」や「雑踏・交通誘導の警備」に該当する1、2号警備の現場を紹介していく。そのなかでも特に、工事やイベントに立つ警備員たちは、天候によって仕事が潰れることがあるため、給料が安定しない。今回の1、2号警備経験者への取材では、年収は300万円前後と答える人が多かった。 「給料はほぼ最低賃金。世間では月払いが一般的ですが、私のいた会社では週払い。それくらい金がない人が多かった」 「警備業界は給料の支払いが週払いのところが多いのも特徴。それに慣れてしまうと金欠状態から抜け出すのが難しくなります」 「年度末が近づくと、発注先の国や自治体が予算消化のため工事を増やす傾向があり、警備の仕事も同時に11月から3月頃は繁忙期に。一方で、新年度が始まる4、5月はまだ予算が決まっていないため、閑古鳥が鳴き続ける。給料は日給制。この時期は本当に生活できない」
高齢者がカラダを酷使する仕事
これでは家族など養えるわけがなく、若手が参入してこない。前出の「賃金構造基本統計調査」では、警備員の平均年齢は51.6歳。これも1~4号警備全体の数字で、より瞬発力や判断力が問われる3、4号に若手が集まりやすいことなどを勘案すると、1、2号の平均年齢はより上がるだろう。 こうして現場には高齢警備員が多く集まり、さらに給料は上がらないという負のスパイラルに陥る。あまりにも高齢者が多いことから、現場経験者からは「警備業は、老人のセーフティネットにすらなっている」という声もあるほどだ。 そんな高齢者の多い1、2号の警備で最も必要なもの、それが「体力」だ。体を使った仕事の多いブルーカラーのなかでも、重たい荷物を運ぶことがほとんどないために警備業は「体力がない人が就くブルーカラー業」、と思われがちだか、そんなことはない。 基本、仕事が始まれば立ちっぱなし。外での仕事が多いため、夏は暑く、冬は寒い。直射日光に晒されようが木枯らしに吹かれようが、自分の持ち場を離れることができない過酷な仕事。筋力は必要なくとも体は酷使するのだ。 「現場はとにかく高齢の警備員ばかり。本当に何かあった時に対応できるのか不安」 「ひとりのポストで交通誘導する時はトイレに行けないので、膀胱炎率が高いと聞きます」 「現場にいる警備員の多くは歯がないかボロボロです。クルマがない。あってもこちらもボロボロの軽自動車です。どれもこれも、やはりお金がないからです」