「この棒振り野郎!」と罵られることも…現場は高齢者ばかりという「警備員」のリアル「トイレに行けないので膀胱炎率は高い」
1号から4号
警備員として働くまでの道のりはまだ続く。正社員やパート・アルバイトなどの雇用形態に関係なく、必ず「研修」を受けなければならないのだ。初めて警備業に就く人たちに定められているのは、「基本教育」と「業務別教育」。これを合わせて20時間以上受講する義務がある。 「基本教育」で学ぶのは、警備員の資質、関係する法律、事故発生時の対応や応急措置、そして護身用具の使い方や護身方法など。 そして、もうひとつの「業務別教育」。 警備員とひと口に言っても、実はその業務は以下の4種類に分けられており、それぞれの業務内容に関する教育を受ける必要がある。 1号業務:「施設の警備」 事務所や住宅、商業施設、病院、駐車場、遊園地などでのトラブル発生を警戒・見回りしたり、出入口の人やクルマの管理を行ったり、防犯カメラの映像を監視したりする業務 2号業務:「雑踏・交通誘導の警備」 道路工事の現場やイベントや祭など人が多く集まる場所での交通誘導や雑踏整理などを行い、事故やトラブルを未然に防ぐ業務 3号:「運搬の警備」 運搬中の現金、貴金属、美術品などに対して盗難や事故の発生を警戒し、防止する業務 4号:「身辺警備」 一般で言うところの「ボディーガード」。著名人だけでなく一般人においても、契約者の身体に対する危害の発生を警戒し、事故やトラブルを防止する業務 こうした研修は、採用時だけ受ければいいというわけではない。すでに警備員として働いている人たちも、職務遂行に必要な知識や技術をアップデートするために年度ごとに「現任研修」を受ける義務もある。 警備員はよくドラマなどで「簡単に就ける仕事」という位置付けで描かれることが多いが、同職に就くには、これらのように様々な関門を突破する必要があるのだ。門戸はブルーカラーのなかでは狭いといっていい。
届け出ないといけない「制服」
なぜここまで厳しいかといえば、やはり業務上「人や物を守(護)る仕事」であるがゆえだろう。 そういう意味では、もう一つ厳しく管理されるのが「制服」だ。第3者の手にわたり悪用されてしまわぬよう、警備員と一般人、警察官との差を明確にする必要がある。 実は警備員の制服(警備服)は、他のブルーカラー職種のように会社が勝手に決めたり市販の作業服を気軽に作業員へ支給すればいいものではない。警備会社が以下のような内容についてどのようなデザイン・色なのか「服装届出書」に記載し、公安委員会に提出・承認を得る必要があると、こちらも「警備業法」に記されているのだ。 ・頭(帽子、ヘルメット) ・上衣(シャツ、ジャケット、防寒コート、空調服、ネクタイなど) ・下衣(ズボン、スカート、防寒ズボンなど) ・標章ワッペン(胸部、上腕部) ・標章ワッペン原寸大の面積図 ・服装の着用写真 ・その他(警備に必要な小物など) 一つ一つの記載内容も非常に細かく、例えば上衣では、それぞれのポケットの位置やボタンの数まで報告しなければならない。こうした細かなたくさんのルールに対して、現場の警備業経営者からはこんな声もある。 「警備業法は昭和47年にできた法律。何度か改正はされているものの、時代に合っていないと感じます。反社会勢力の警備員が多く存在した当時は、警備員による犯罪が頻発していたうえ、統一した誘導などがなく分かりづらかった。つまり同法は、警備員に相応しくない者の排除や、統一基準による運営が目的だったんです」 また、警備服の価格の高さも足かせになるという。 「例えば、盛夏シャツですと2万円。新しいデザインの制服を作り認定されると、古い制服はもう使えません。もちろん制服は必要ですが、ワッペンなどの細かい規定や届出、認可まで必要なのかと思うことも。会社の宣伝も兼ねて背中辺りに社名を入れたデザインにすればいいと思う」