チャレンジしないと自分が乾燥していく!? 何歳であっても「今、始める」ことのススメ【堀井美香さんインタビュー】
28年間、アナウンサーとして勤めたTBSを辞めて、50歳で独立した堀井美香さん。現在はポッドキャスト「ウエンズデイホリデイ」「OVER THE SUN」、ラジオ「メタウォーターPresents水音スケッチ」、テレビ番組のナレーション、エッセー等のほか、朗読イベント「yomibasyo PROJECT」や司会業などを行う中で、図書館での読みきかせ会等も開催しています。バイタリティ溢れる美香さんに「自分らしい働き方」についてお話を伺いました。 【画像】ジェーン・スー&堀井美香による奇祭「幸せの黄色い私たち」。愛と意地と悪ふざけのすさまじい熱量が会場を埋め尽くす ■アクセル全開で走り続けた1年目。 疲れが溜まって不調を抱えることに ――独立されてからの最初の1年は、来た仕事は全部受けられていたとお聞きしました。その後、自分らしい働き方は見つかりましたか。 堀井美香さん(以下、堀井) そうですね、「このお仕事はすごくやりたい」とか、「これは今ちょっと忙しいから一旦保留にしよう」みたいなことを選択できるようになりました。 1年目は、容量いっぱいまでって感じで常にアドレナリンが出ている状態だったんです。実際、アドレナリン出さなきゃいけない時期だったから、時間が重ならない限りは全部引き受けていたんですよね。 ただ、何ヶ月か前ちょっと体に不調を感じて病院に行ったら先生に「休んだほうがいいよ。休めないなら、先にもう休みを決めちゃいなさい」って言われたんです。要するによく睡眠をとりなさいと。確かに、やれるだけやって、あとはクタッと倒れ込んで3時間寝るみたいな日々が続いていました。それでもなんとかなっていたので、別にワーカホリックではないと思っていたんです。 でも先生から「そういうのは良くないから、23時になったら強制的に寝るとか、この日とこの日は絶対に仕事入れないって決めてカレンダーを赤で囲みなさい」とアドバイスを受けました。だけど、強制的に休むって覚悟がないとできないんですよね。 ――やりたい仕事のオファーが入ると断れない、とか? 堀井 好きな作品のナレーションのオファーが来たら「行くよ、行くよ」ってなっちゃう。旅行に行っても綺麗な自然の中にいても、私の場合、仕事になってしまうんです。この体験をどう話そう、と思ったり、本を読んでいても「これ、雑誌の連載で書こう」って思ったり。自分の感情を入れることなく読んで、とりあえず要点はここだ、みたいな読み方しちゃうんですよね。 ■頭を空っぽにする「瞑想」 ストレス解放の目安は5分 ――仕事が充実していることもあると思いますが、何でも仕事に結びつけてしまうと、知らず知らずのうちに疲れが溜まってしまうかも知れないですね。 堀井 先日、「ウエンズデイホリデイ」に精神科医YouTuberの益田裕介先生がゲストでいらしたんです。「5分、瞑想できますか」って聞かれて、5分…絶対無理!と思いました。多分、できても2~3分が限度。3分のカップ麺も待てずに早めに食べちゃうタイプなので(苦笑)。 先生からは「5分瞑想できるかどうかはひとつの目安ですよ。仕事に入れ込みすぎて3分待てない人が多い。着信来てるかな?LINE見たい!ってなっちゃうんです」と言われました。 私は瞑想…何も考えずに無になることに耐えるっていうのができないので、先生からは「強制的にやるしかない」って言われました。強制的に頑張ります(笑) ――心の健康のためにも「休む」って大事なんですね。休みをとるためにも仕事の取捨選択は大切ですが、美香さんがお仕事の選択をされるとき、一番大事にしているのはなんでしょう? 堀井 まだ成長できるな、今伸びてるなと思えるお仕事はすごく嬉しいです。少し難しい課題があって、そこを乗り越えた時は結構快感なので。チャレンジせざる得ない仕事ってあるじゃないですか。もう逃げられないぞ、って。そういう仕事ってやっぱりやっただけ実になるものがあるんですよね。 時々自分の範囲外の仕事も舞い込んでくる。フリーランスだから受ける受けないの選択肢は自分にありますが、そのチャレンジングな仕事を全部捨てると、だんだんと自分が乾燥していくのがわかるんです。だから、ストレスにならない程度に自分への“圧“っていうのは絶対必要なんだなって思います。「この方にインタビューするには、世界のエネルギー事情をさらわないと…」みたいな状況もあるのですが、まずは勉強してみるか!って感じです。 ■何歳であっても「今、始める」ってすごくいい ――そういう時間が、また自分の引き出しを増やすことにも繋がりますね。最後に「何か始めてみたいな」と思っている読者に向けてメッセージをお願いします。 堀井 人生の中で自分のために時間を使えない忙しい時期ってあったと思うし、もしかして今も忙しいのかもしれないですけど、昔やりたかったこととか、気になっていたこととか必ず誰にでもあると思うんです。何か始めたいけど何をしたらいいのかわからないという場合は、40代50代なら、まずはそれを思い出して1回やってみるっていうのがいいかなと思います。30代の人でも何か始めてみてそれを10年20年続けていくことで50代、60代になった時にご褒美があるかもしれない。 「今、始める」ってすごくいいことだと思うし、どうしても自分ではやりたいことがない、という場合は、人をアシストするとか、大変な人を手伝うとか、ボランティアだったりするかもしれないですけど、人のためになることをするっていうのもひとつの方法だと思います。 やりたいこと、やれること、できることってまだまだ世の中にたくさん溢れているので、まずは難しく考えないでスタートしてみる。失敗したら戻っておいで、大丈夫。また次があるから。と思うのです。 ▶プロフィール 堀井美香(ほりい・みか) 1972年、秋田県生まれ。ʼ95年TBSにアナウンサーとして入社し、2022年に退社しフリーに。現在は数々の人気番組のナレーションのほか、ジェーン・スーさんとのPodcast番組『OVER THE SUN』が人気を集める。その他朗読会などのイベントも手掛ける。著書に『一旦、 退社。~50歳からの独立日記』(大和書房)など。 2024年8月12日(月)の新日本フィルハーモニー交響楽団「Hello!! シネマミュージックin Summer」にナレーション・司会として出演予定。 取材・文=竹林和奈