子どもが生まれます。今まで気にしたことがなかったけれど、もし自分が病気やけがで働けなくなったら家族が大変な思いをするのではと心配です。保険で備えるべきですか?
高額療養費を受けるための条件
この高額療養費を受けるためには、いずれかの健康保険制度に加入することが前提です。定職に就くこともなく、国民健康保険料を納めていない方は、この制度の適用は受けられません。 現役世代の方は、企業の健康保険組合や役所の共済組合に、個人事業主や75歳未満の高齢者は国民健康保険に、75歳以上の高齢者は後期高齢者保険に加入し保険料を納めていることが、受給の前提になります。 ただし健康保険の適用外となっている治療や投薬については、この制度は適用されません。 例えば、難病に効果的な新薬が開発された、これまでにない新しいがんの治療法が可能になったといったケースでは、厚生労働省が「保険適用」を承認していなければ、この高額療養費制度の対象にはなりません。効果が確実でない限り、簡単には承認されないというハードルがあります。 また入院時の差額ベッド代や食事代も適用されません。この制度の適用外の治療や投薬を受ける場合は、この制度が利用できないため、実際にかかった医療費を全額支払うことになります。こうした際には、当該の疾病をカバーした民間の医療保険を見つける必要があります。 高額療養費制度の対象となり、かつ別途加入していた民間医療保険の給付対象にもなる場合は、それぞれの制度から給付を受けられます。その際は、医療機関に支払った実際の金額よりも、実際に受け取った給付額のほうが多くなるケースも出てきます。 その意味では、掛け金が少額で済む民間医療保険に加入しておくことも、効果的な選択肢です。会社員の方は、企業単位で加入できる掛け金の安い保険商品もあるかと思います。 治療に確実な効果を上げることが実証されない段階で、1粒100万円以上の高額な創薬の保険適用を承認すれば、それだけ健康保険組合の負担が増え、財政を圧迫する結果になります。 厚生労働省の承認基準が厳しいのは、そうした側面も見ているからです。現在でも健康保険組合の中には財債基盤は弱いところも多く、今後高齢者の増加につれて医療費の増加が続けば、さらに負担が増える可能性があるでしょう。 執筆者:黒木達也 経済ジャーナリスト 監修:中嶋正廣 行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者。
ファイナンシャルフィールド編集部