2029年に最低賃金1500円は「余裕で可能」な根拠 最賃の引き上げは「宿泊・飲食、小売業」の問題
中小企業だけで考えると、7.1兆円の8割にあたる5.7兆円は付加価値164.3兆円に対して3.5%、117.8兆円の人件費に対して4.8%、営業利益16.6兆円に対しては34.3%、経常利益25.4兆円に対して22.4%です。 2029年の最低賃金1500円は5年先ですが、5年前の付加価値と比較しても、中小企業の2023年度付加価値は25.4兆円増加しているため、5.7兆円の賃上げにも対応できる余力があります。
大企業、中堅企業、小規模事業者のいずれも、2023年度の経常利益は史上最高水準です。内部留保も大企業、中小企業ともに増加しており、2023年度の中小企業の内部留保は206.6兆円で9.6%増、大企業の7.7%増を上回りました。 中小企業の現金・預金も過去最高の174.7兆円に増加し、大企業の127.1兆円を上回っています。第2次安倍政権以降、中小企業の現金・預金は76.8兆円増え、大企業の増加分62.1兆円を超えました。
■中小企業の問題ではなく、宿泊・飲食、小売業の問題 そもそも「中小企業への配慮」といった主張は、本質的な問題ではありません。 中小企業は336万社もあるため、最低賃金で働く労働者がすべての中小企業やすべての業種に均等に分布しているわけではなく、すべての中小企業が最低賃金1500円に耐えられないわけでもありません。 実際のデータを見ると、最低賃金で働く人の割合14.1%を上回る業種は、宿泊・飲食業34.2%、卸売・小売業22.8%、生活関連サービス業・娯楽業21.0%、その他サービス業15.9%です。消費者に最も近い業種ほど、最低賃金で働く比率が高いことがわかります。この4つの業種は全労働人口の51.5%しか占めていませんが、最低賃金近傍の労働者の約6割を占めています。
したがって、政府は「中小企業を支援する」とするよりも、これらの4つの業界などの生産性向上をいかに実現するかに注力すべきです。 中小企業の経営者団体は、同調を求めるために「地方が困る」と主張しますが、これも誤った理屈です。 地方では中小企業で働く人の割合が高いですが、実際には中小企業の多くは大都市に集中しています。 中小企業庁の『中小企業白書(2024年版)』によれば、336万4891社の中小企業のうち、東京都、大阪府、愛知県にあるのは87万5979社であり、全体の26.0%を占めます。上位5都府県の中小企業は全体の36.0%、上位10都道府県では54.4%に達します。逆に、下位23県の中小企業は全体の20.8%しかありません。