2029年に最低賃金1500円は「余裕で可能」な根拠 最賃の引き上げは「宿泊・飲食、小売業」の問題
そもそも、東京と地方の最低賃金の差が大きくなると、東京への一極集中が進むため、地方でも賃上げを行うメリットは非常に大きいです。問題が発生した場合には、地方創生で対応すべきでしょう。 経営者団体が不安を煽るような感情論に訴えることは、根拠に乏しく、不当な主張と考えられます。 ■なぜ労働者が犠牲にならなければならないのか? 日本の最低賃金は先進国の中で最低水準です。物価が上がり、社会保険料などの税負担も増加している中、賃金は物価や税金の上昇を上回るように引き上げなければなりません。
しかし経営者団体は、「中小企業は1500円を支払えない」と主張します。 人手不足が深刻な現状では、一部の企業の雇用が減少したとしても、失業率が上がるとは考えにくいです。それにもかかわらず、1500円も支払わない企業を存続させるために、なぜ労働者の賃金が上がらず貧困を強いられるのでしょうか。 経営者には生産性を向上させ、賃金を上げる努力が求められています。生産性を上げて賃金を上げられない経営者は、経済同友会の新浪剛史氏が指摘するように、経営者として失格です。
また、「価格転嫁ができないため、賃上げが難しい」という主張もありますが、これは危険です。逆に、それを理由に賃金を上げなければ、価格転嫁をする必要性はその分だけ後退します。 要するに、経営者は価格転嫁をしたくないから賃上げをせずに、物価上昇の皺寄せを労働者に押し付けているとも言えます。賃金が上がれば、価格転嫁の実現が経営にとって重要な課題となり、経営者も必死で取り組むでしょう。 ここに重要なポイントがあります。経済学的に言えば、労働単価が上がると、経営者は設備投資を増やし、生産性を向上させる動機が高まります。労働単価が低いままであれば、途上国で見られるように、設備投資が進まず、生産性向上への動機が働きません。
イギリスの最低賃金引き上げ後の分析でも、最低賃金の引き上げは最低生産性を引き上げる効果があると確認されています。最低賃金の引き上げによって、企業は生産性向上の努力を強いられ、それが結果的に付加価値を増やすことにつながります。 政府としても、物価や社会保険料の増加が続く限り、賃金を上げられない企業を存続させるメリットはどこにもありません。 ■経営者の発言をデータ分析で検証せよ 私は一貫して、賃上げは日本経済にとって最重要の課題であると主張してきました。その中で、政府が賃金を直接引き上げさせられる唯一の手段は最低賃金の引き上げであり、経済政策として戦略的に引き上げるべきだと強調してきました。