【プレイバック’14】本誌記者も被害に!新宿歌舞伎町に跋扈した「合法」ぼったくりの巧妙手口
10年前、20年前、30年前に『FRIDAY』は何を報じていたのか。当時話題になったトピックをいまふたたび振り返る【プレイバック・フライデー】。今回は10年前の’14年10月17日号掲載の『1時間5000円のはずが2人で10万円超!新宿歌舞伎町で急増する〝新〟ぼったくりクラブの手口』を紹介する。 【このあとに地獄が…】ドレス姿の美女たち…本誌記者2名が楽しく遊んだぼったくりバーの店内 「7月にオープンした新店! 可愛い子だらけで60分5000円ポッキリだよ!」 そんな客引きの言葉に誘われてフラフラと歌舞伎町のとあるキャバクラに入ってしまった本誌オジサン記者2名。だが、1時間後には酔いも一気に醒めるような請求額をつきつけられることとなった。10年前に実際に行われていたぼったくりの手口とは……。(以下《 》内の記述は過去記事より引用) ◆1杯4000円のグラスワインをグビグビと…… ’14年の取材当時、オジサン記者たちが客引きに連れて行かれたのは雑居ビルの中にあるキャバクラ『P』だった。座席数は30ほどで安いスナックよりはマシな内装の店内には、全員20代と思われるドレス姿のキャバ嬢が揃っており、一見ぼったくり店のニオイはなかった。『レイコ』と名乗るキャバ嬢が記者の横に座り、最初は出身地や血液型などで盛り上がっていたのだが……。 《「一杯いただいていいですか~♡」 「もちろん」と言うと店員がグラスワインを運んでくる。なぜかグラスにはワインが一口分ほどしか入っていない。彼女は一瞬でそれを飲み干し、 「もう一杯いいですか~」 ふとメニュー表を見ると、ワイン一杯4000円! たまらず制止するが、さらにレイコはガッツいてくる。 「え~なんで~。楽しく飲もうよ~」 「高いから、ダメ!」 そんなラリーが3回続くと、ボーイが女のコをチェンジ。続いてやってきたのはハズキ。普通、キャバクラでは女のコは指名を取るため名刺を渡してくるが、ここでは誰も出そうとしない。ハナから “一期一会”のつもりなのだ。 ハズキは手荒だった。 「お願いしま~す♡」 席に着くなりそう言うと、グラスワインが運ばれてくる。 「飲んでいいって言ってないよ」 「えっ? いいから飲もうよ~!」》 ◆「合法のぼったくり」という謎ワード そしてお会計。明細書には1時間のセット料金1万円(2名分)、グラスワイン1万6000円(4杯分)、税金・サービス料7800円、クレジットカード手数料7800円で計4万1600円の請求だった。サービス料とクレジットカード手数料は、それぞれ代金の30%という破格の値段設定がされていた。 「1人5000円じゃないの?」と抗議するも、「ええ、セット料金は5000円です」と言われ、疲れ切ったオジサン記者2人は泣く泣く支払ったのだった。記事ではベテラン客引きのA氏が「新型のぼったくり」として、当時の歌舞伎町で激増している手法を語っている。 《「合法のぼったくりなんです。これが儲かるということが知れ渡って、今年になって同じ手口の店が急増し、100店はあります。営業時間や料金説明など、表向き風営法や条例を遵守している。客と料金でトラブれば、脅さずに説得し最後は明細書を片手に客を警察に突き出してしまうんです。警察も手の出しようがないから、客は泣き寝入りするしかありません。お兄さんも引っかかったの?(笑)」》 昔は法外な料金を請求されて文句を言うと店の奥からヤクザ風の男が出てくる……というぼったくり店が多かったが、’00年以降、迷惑防止条例、いわゆるぼったくり防止条例が施行されて、ほぼ姿を消した。さらに東京都は’05年に同条例を改正し、客引きの撲滅にも力を入れていた。だが、その一方で店側の手口はより巧妙になっていたのだ。 中にはぼったくり店から出て来た客に「もっといい店を紹介します」と言って近づいて来る客引きもいたという。ぼったくられた客からさらにぼったくるのが彼らの手口だったのだ。女のコに勝手にガンガンドリンクを飲まれて、あっという間に料金が10万円を超えるケースもあったそうだ。 オジサン記者の2人は高い〝授業料〟を払ったようだ。 ◆警察が手を出せないのをいいことにやりたい放題だった 記事中のコメントで客引きのA氏は「合法のぼったくり」という言葉を使っているが、「合法」というよりはあくまで刑事事件として立件しづらい「グレー」と言ったほうが正しいかもしれない。飲食店がどう料金をつけるかはあくまで自由。いかに料金が高くても、そのことを事前に客にちゃんと説明していれば、ぼったくりにはならないからだ。 もし十分に説明がなされていなくても、店が「説明した」と言い張れば、「説明されていない」という客との間での水掛け論にしかならない。そして、店が請求書を出して客にお金を払わせている以上、詐欺として立件することもできない。したがって当時は交番に駆け込んでも「民事不介入」だからと、取り合ってもらえなかったのだ。だが、もちろん客が酔っているのをいいことに水増しした請求書を突き付けるケースは日常茶飯事だっただろう。 このような新手のぼったくりは’14年から’15年にかけて歌舞伎町で大流行した。当時の報道ではぼったくり被害の110番件数は’15年の1月~4月だけで1000件を超えたという。この頃の歌舞伎町の交番前は週末になると、客とぼったくり店の店員でごった返していた。ここまでぼったくりが増えた理由として、警察の対応に問題があったという指摘もあった。 ’15年の6月ごろから警察の対応が変わり、交番に客と店員が来ると新宿署で事情を聴くようになったという。このことが直接の原因かどうかはわからないが、その後この手のぼったくりは減っていったようだ。 近年では歌舞伎町の街頭アナウンスでも「客引きは100%ぼったくり」等々、注意喚起をしているが、それでも被害がなくなったわけではない。コロナ禍以降にはマッチングアプリでマッチした女性から「行きたい店がある」と言われてぼったくり店に誘いこまれるケースが多いという。手を変え品を変えてぼったくりは生き残っているのだ。
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