【逝去】八代亜紀さんが闘病していた「膠原病」とは? 皮膚筋炎との関係も医師が解説
膠原病の症状
編集部: 膠原病ではどのような症状がみられますか? 武井先生: 膠原病には多くの病気があり、症状は多彩です。 膠原病に共通する症状として、次の症状がみられます。 ・発熱 ・倦怠感 ・体重減少 ・関節の痛みや腫れ、こわばりなどの関節症状 ・筋力低下や筋の痛みなどの筋症状 ・湿疹、黒ずみなどの皮膚症状 ・手の指が真っ白になるレイノー症状 ・咳や息切れなどの呼吸器症状 ・眼の乾燥やゴロゴロした感じ、視力異常などの眼の症状 ・動悸、高血圧などの循環器症状 ・腹痛、食欲低下、口内炎などの消化器症状 ・麻痺や知覚・運動異常などの神経症状 ・リンパ節の腫れ ・皮下結節(皮膚の下にできるしこり)
膠原病の原因
編集部: 膠原病の原因は何でしょうか? 武井先生: 自分の体に細菌やウイルスなどの異物が入ってきたときに、異物を追い出そうとして起こる免疫反応が、自分自身を攻撃することで起こります。通常ならば、異物のみを攻撃しますが、自分の関節や筋肉、皮膚などの組織を攻撃してしまうリンパ球や抗体が血液中にできることが膠原病を起こす原因と考えられています。 遺伝的、体質的な要因、環境因子やウイルス感染なども、膠原病の発症に関与しているといわれています。
膠原病の代表的な病気
編集部: 膠原病の代表的な病気について教えてください。 武井先生: 膠原病には、全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎・多発性筋炎、強皮症、結節性多発性動脈周囲炎、シェーグレン症候群、関節リウマチ、混合性結合組織病(MCTD)、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(チャーグ・シュトラウス症候群)、多発血管炎性肉芽腫症(ウェゲナー肉芽腫症)、顕微鏡的多発血管炎、巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)、高安動脈炎(大動脈炎症候群)、強直性脊椎炎、リウマチ性多発筋痛症、好酸球性筋膜炎、再発性多発軟骨炎、成人スティル病、乾癬性関節炎、サルコイドーシス、ベーチェット病など、多数の病気があります。 多くの膠原病の中から、代表的な膠原病の病気として、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)、シェーグレン症候群、強皮症、皮膚筋炎・多発性筋炎が挙げられます。 《全身性エリテマトーデス(SLE)》 編集部: 全身性エリテマトーデス(SLE)とはどのような病気ですか? 武井先生: 英語名のSystemic Lupus Erythematosusの頭文字をとってSLEとも呼ばれます。 自己免疫反応によって、発熱、 倦怠感 などの症状や、関節、皮膚、腎臓、肺、中枢神経などにさまざまな症状がみられる病気です。 蝶が羽を広げている形にみえる蝶型紅斑と呼ばれる赤い発疹が、両頬にみられるのが特徴です。顔面や耳、首のまわりにもかさかさした丸い紅斑が現れます。 関節症状として、手指の痛みがよくみられ、数日単位で痛む関節の場所が変わる移動性の関節炎が肘や膝に出ることもあります。 《関節リウマチ(RA)》 編集部: 関節リウマチ(RA)とはどのような病気ですか? 武井先生: 関節内の滑膜細胞に炎症が起こり、全身の関節が腫れて痛む病気です。 手指や手関節、足の指などの小さな関節の腫れやこわばりがみられます。関節の炎症にとどまらず、骨や軟骨が破壊されて、関節や骨の強い変形が起こることもあります。関節の変形が生じると、日常生活動作が障害され、生活の質は著しく低下します。 発熱、筋の痛み、倦怠感、体重減少、うつ症状などの全身症状もみられます。 原因として考えられているのは、自己免疫異常の関与です。 《シェーグレン症候群》 編集部: シェーグレン症候群とはどのような病気ですか? 武井先生: 涙腺と唾液腺に慢性の炎症が起こり、目や口が乾く症状がみられる病気です。病気の経過中に腎臓、膵臓、肺、血液、皮膚、末梢神経などの全身の臓器が障害されるタイプもあります。 単独でみられるのではなく、ほかの膠原病に合併して起こる場合が多い病気です。遺伝的な要因やウイルスなどの環境要因、免疫異常、女性ホルモンの関与が原因として考えられています。 《強皮症》 編集部: 強皮症とはどのような病気ですか? 武井先生: 皮膚や内臓に症状が出る全身性強皮症と皮膚だけに症状が出る限局性強皮症があります。 冷たいものに触れると手指が真っ白になるレイノー症状や皮膚が硬くなっていく症状がみられます。主にみられるのは、手指の腫れやこわばり、指が曲がって伸びない症状ですが、皮膚の硬さが手背や前腕、上腕、体幹といった体の中心にも認められる場合があります。皮膚の潰瘍や、肺、腎臓、食道に症状が現れる場合もあります。 原因として考えられているのは線維芽細胞の活性化、血管障害、免疫異常の関与です。 《皮膚筋炎・多発性筋炎》 編集部: 皮膚筋炎・多発性筋炎とはどのような病気ですか? 武井先生: 筋肉が炎症を起こして、筋力低下や疲れやすさ、痛みなどがみられる病気です。皮膚筋炎では、手指の関節背面、肘関節や膝関節の外側、まぶたに独特な紅斑が認められます。 自己免疫が筋肉や皮膚を攻撃することが原因で起こる病気です。