「富士山×ローソン店舗黒幕騒動」から3か月…現地で見た目隠しシートの”有効活用”と消えた観光客の行先
消えた外国人観光客はどこへ行ったのか
では、富士山×ローソンで一躍有名になった”聖地”から消えた外国人観光客はどこへ行ったのか。そのヒントは、意外にも足を遠ざけさせた目隠しシートにあった。 「町としての課題は、河口湖に観光に来た人をいかに分散させるかでした。せっかく来ていただいてるのに、河口湖の一部しか知られていないのはもったいない。そこで、インバウンド客用に多言語対応の紹介サイトを新たに作成し、幅広く町の魅力を知ってもらい、いろいろなスポットに足を運んでもらおうといま力を入れています」(前出の観光課スタッフ)。 実は、そのサイトへ誘導するための入口が、シートの中央付近に二次元コードとして貼られている。インバウンド観光客のお目当てだった絶好の撮影スポットを遮るシートに、注意喚起の警告文を張り付けるのではなく、他の見どころを知らせる情報を掲載するとは、町も考えたものだ。 実際、インバウンド客の現地の主な足となるバスは、河口湖周辺をくまなく巡回し、他エリアのローソンや飲食店などでも停車。たいていの場所から富士山が望める富士河口湖町の魅力をより深く知ってもらうべく、客の分散化に貢献している。
オーバーツーリズム問題の理想的な解決策とは
2023年のデータ※では、同町を訪れた外国人宿泊客は57万6299人。コロナ前には及ばないものの、今年はそれよりも伸びる勢いで、着実にインバウンド客が戻ってきているという。 このうち、最も多いのが台湾からで11万8332人、次いで香港8万3834人、タイ6万1881人とアジア勢がトップ3を占める。欧米ではアメリカ3万6277人、オーストラリア2万8268人、フランス1万1330人と同町には多様な国々の人が訪れている。 ※富士河口湖町観光連盟 これら外国人観光客を魅了する吸引力は、世界遺産富士山の麓に位置し、富士五湖のうち、4つ湖を有する恵まれた同町の環境だ。そうした中で突如ぼっ発した”富士山黒幕騒動”。その根源は、ごく限られた場所で、生活道路や地元店舗の安全を脅かすほどに殺到した観光客が、ルールやマナーを無視して地元住民の反感を増幅させたことにある。 オーバーツーリズムと重ねて問題視する捉え方もあったが、富士山黒幕騒動は単純にそれとは同列に語れないだろう。前者は、本来の観光地が増えすぎた観光客で住民の生活も含めた機能不全に陥ることであり、後者はもともと観光地でないスポットがSNSの影響で一躍注目されたにすぎないからだ。 それでも、観光客を分散させるのは観光公害に共通の有効な解決策のひとつに違いない。今回の富士山黒幕騒動は、結果的に観光地がオーバーツーリズムとどう向き合うのが最善かを考えるきっかけになった点で意義があるだろう。15日には台風7号の影響を考慮し、一時的に取り外された目隠しシート。もともと暫定的な対策であり、現状では騒動も落ち着いており、このまま平穏が維持されるなら、目隠し対応も幕引きとしていいのかもしれない。
弁護士JP編集部