九州国際大付のエース香西 捨てた「勝利の記憶」 選抜高校野球
第94回選抜高校野球大会は第1日の19日、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で1回戦が行われ、2021年秋の九州王者の九州国際大付(福岡)が第3試合でクラーク記念国際(北海道)に延長十回、3―2でサヨナラ勝ちした。エース左腕の香西一希(3年)が徐々に調子を上げて完投し、劇的勝利につなげた。 おかしい――。目の前のクラーク記念国際は2021年秋の明治神宮大会1回戦で完投し、勝利した相手。その試合で効果的だった直球がはじき返された。三回までに4安打を浴びて2失点。九州国際大付のエース左腕・香西は緊張もあり、直球の制球が定まっていないことを自覚した。だから、「勝利の記憶」を封印した。 四回からは「ほとんど変化球」と大胆に配球を変えた。チェンジアップを多投し始めた六回は球速120キロを切るボールばかりだったが、それまで2安打の2番・小野を空振り三振に仕留めると、3、4番も力のない内野ゴロに打ち取った。四回から延長十回までの7イニングで一人も走者を出さない“パーフェクト”投球でサヨナラ勝ちを呼び込んだ。 修正の早さの裏には苦い経験がある。21年夏の福岡大会準々決勝で3番手で登板し、直球にこだわったのが裏目に出て敗戦の一因となった。「真っすぐで押したい、押したい、という気持ちだった。コントロールを大事にするようになった」。それからは「打たせて取る」が口癖になり、直球にこだわらない考えを身につけた。 延長十回を無四球完投。素早く修正できたのは抜群の制球力が土台にあるからだ。小学生時代からコントロールは磨いてきた。暇さえあれば学校で白球を握って指先の感覚を養えるように、いつもポケットにはボールを入れていた。 終わってみれば、10回を4安打2失点。21年秋の公式戦で出場校中最多の18本塁打を放った強力打線が注目されるチームだが、技巧派エースの面目躍如だった。【吉見裕都】 ◇全31試合をライブ中継 公式サイト「センバツLIVE!」(https://mainichi.jp/koshien/senbatsu/2022)では大会期間中、全31試合を動画中継します。また、「スポーツナビ」(https://baseball.yahoo.co.jp/hsb_spring/)でも展開します。