サンフレッチェ広島レジーナはなぜ連覇を達成できたのか? エースの上野真実が語った「今日の結果につながった」こと【コラム】
●システム変更後もチーム全員で共有できていたこと
「ワイドを使われ中が薄くなる状況もありましたし、できるだけクロスのところにプレッシングを行くことと、 中の人数と競れる状況を作ること、チャレンジ&カバーが近い状況でできるような意図をもって3バックにしました」 3センターバックになった時点で指揮官からの「守り切るというメッセージ」を受けとると、ピッチに立つ全員が守備に徹し、気持ちを一つにして戦っていく。 上野は「5枚になった部分もありましたが、あまり守りに入らない、下がり過ぎないことは、チームで共有できていました」と話した。 S広島Rは、ボールを奪っても後ろ重心のため前線でのキープができず、ロングボールやクリアボールは押し返され、受け身となる我慢の時間が続く。I神戸はパワープレーに活路を見出し、背後へのボールを増やすが、紫の選手たちは最後まで集中し、体を投げ出す気迫のディフェンスを披露。ついにタイムアップを迎えるとS広島Rがクラシエカップ2連覇を達成。選手、スタッフ、ファン・サポーターは喜びを爆発させた。
●「チームに勢いも付いた」。次なる目標は
I神戸の前にシュート4本に抑え込まれたこの試合は、まさにワンチャンスを生かした形となった。 上野は「90分間を通して全員で集中しました。しっかり守り切れたことが今日の結果につながったと思います」。そしてクラシエカップの2連覇について「連覇は自分たちしかできないことですし、それを目標にやってきたので嬉しかったです。チームに勢いも付いたと思うので、リーグ後半戦に向けてレッジーナらしいサッカーを見せていきたいと思います」と前を向いた。 この試合の決勝点を決め、プレーヤー・オブ・ザ・マッチに輝いた上野について吉田監督は「ストライカーとして毎試合期待がある中で、この大一番で得点を取ってくれた部分に対して非常に良かったと思います。守備面についても、ポジションが変わった中でも、自分の役割を的確に理解してチームが助かる守備を献身的に、今日もやってくれたと思います。押し込まれた中でも、ゴール前に戻るシーン、セカンドを拾って出ていくシーン、チームが苦しい時こそ、非常に頼りになる選手だと改めて感じました」と手放しで称えた。 昨シーズンは、リーグ戦22試合に出場し11得点を記録。WEリーグベストイレブンにも選ばれている。10月には日本女子代表メンバーに招集されるも怪我のため離脱。アピールの機会を失い、非常に悔しい思いをしたが、今はコンディションも上がり、日本女子代表のニルス・ニールセン新監督にアピールする働きを見せることはできた。 「まずはチームで活躍することが一番なので結果を残していきたいと思います」一点の迷いもなくチームのためにプレーし、勝利を引き寄せる紫の背番号9は、一歩一歩階段を駆け上がっていく。 (取材・文:石田達也)
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