今冬の感染症流行予報 ~コロナ再燃と冬の感染症の復活~【東京医科大客員教授・濱田篤郎】
◇ノロウイルスの流行も復活
ノロウイルスによる下痢症も、冬の感染症として毎年のように拡大してきましたが、コロナが発生してからは、しばらく抑えられていました。このウイルスは経口感染が主で、汚染された食品を食べてうつるルートがよく知られています。これに加えて、患者が触ったドアノブなどにノロウイルスが付着し、それを健康な人が手で拾い、無意識に口に運んで感染するルートが多いようです。 コロナ対策として手洗いを強化していた期間は、後者のルートを遮断できたので、ノロウイルスの感染を減らせました。さらにマスクを着用していると、手で口を触る行為が減らせるので、これもノロウイルスの流行を抑えるのに貢献したと思います。 こうしたコロナの予防対策が緩和されたことにより、今冬はノロウイルスによる下痢症も増加傾向にあります。こちらも流行がなかった期間に免疫が低下したため、患者数はコロナ前よりも増える可能性があります。予防対策としては、頻回に手洗いをすることです。ノロウイルスはアルコール消毒が効かないので、流水(温水でも可)で手を洗うようにしましょう。
◇コロナの本格的流行は冬
このように、今冬はインフルエンザやノロウイルスの拡大が予想される中で、コロナの再燃も避けられない状況です。呼吸器感染ウイルスの拡大しやすい時期は冬であることを、本コラムでも何回かお伝えしてきました。 コロナの冬の流行は、ここ数年を見ると、北半球の温帯全体で11月末ごろから始まっています。そして、欧米ではクリスマス後、日本ではお正月明けがピークになるようです。 では、今冬はどれだけ拡大するでしょうか。これは変異株の状況や、ヒトの免疫状態に影響されます。
◇新たな変異株XECの発生
コロナの変異株については、現時点でオミクロン株のXEC型が世界的に拡大傾向にあります。XEC型はJN.1系統の二つの変異株(KS.1.1とKP.3.3)が結合したもので、今年6月にドイツで確認され、その後、欧米や日本で増加してきました。米国CDCの11月上旬の報告(図)では、XEC型が変異株の28%を占め(棒グラフの一番右)、日本も東京都の調査では10月末までに25%に増加しています。このままの状況が続けば、今冬の主要な変異株はXEC型になるでしょう。 XEC型の詳しい特徴はいまだ分かっていませんが、重症度に変化はなく、免疫逃避が今までの変異株よりやや起こりやすいとされています。また、JN.1系統の二つの変異株が結合したものなので、現在使用中のコロナワクチン(JN.1系統のウイルスで製造)も効果があると考えられています。 こうした変異株の状況から判断すると、今冬のコロナの流行は、あまり大きく拡大することはないようです。