「中長距離フェリー」とは何か? 物流支える知られざる“裏方”、日本各地で活躍するその最新動向とは
主要な国内中長距離フェリー航路と航行エリアの特性
国内における主要な中距離フェリー航路は、 ・太平洋航路 ・日本海航路 ・瀬戸内海航路 ・沖縄航路 に分類できる。 太平洋航路は、さらに北海道~東北・関東・名古屋、関東~四国・九州、関西~南九州に大別される。北海道と仙台・名古屋を結ぶ太平洋フェリーは、2泊3日40時間を要する日本最長航路としても有名だ。また、関東と九州を結ぶ航路はオーシャン東九フェリーだけだったが、2021年7月から東京九州フェリーも参入して輸送量が増加している。 日本海航路は、北海道と秋田・新潟および敦賀・舞鶴を結んでいる。日本海航路および敦賀や小浜は、江戸時代に北前船が登場するまでは、北海道・関西間における物流のメインルートであった。物流において日本海航路の果たす役割は昔も今も変わりない。現在、日本海航路は新日本海フェリー1社が担っている。 瀬戸内海航路は、関西と九州、関西と四国、四国と九州を結ぶ航路に大別される。ただ、この瀬戸内海という閉じた海域に、阪九フェリー、名門大洋フェリー、商船三井さんふらわあ、ジャンボフェリー、四国開発フェリー、松山・小倉フェリーとひしめいている。それだけ、瀬戸内海航路の需要が大きいということだろう。また、南海フェリー(和歌山~徳島)、瀬戸内海汽船・石崎汽船(広島・呉~松山)、宇和島運輸フェリー(別府・臼杵~八幡浜)といった近距離フェリーの役割も大きい。 沖縄航路は、鹿児島と奄美大島各島と那覇を結ぶ航路だ。現在は、マルエーフェリーとマリックスラインが、4隻のフェリーで交互に運航している。多くの中長距離フェリーはノンストップであるが、この沖縄航路は鹿児島や那覇と島々を結ぶ役割があり、寄港地が多い特徴がある。
国内フェリーが結ぶ地域間の経済・文化的つながり
フェリーは、航路により収入の内訳が大きく異なる。国土交通省の資料では、距離により運賃収入の構成が以下のように異なっている。 ・関西~九州 長距離:トラック等約71%、乗用車・同乗者約23%、一般旅客約5%、二輪・その他約1% ・本州~四国 中距離:トラック等約67%、乗用車・同乗者約19%、一般旅客約13%、二輪・その他約1% ・本州~四国 近距離:トラック等約35%、乗用車・同乗者約40%、一般旅客約23%、二輪・その他約2% 距離が長くなるほど 「トラック輸送の需要」 が高くなる。距離が短くなるほど、橋や輸送コストの影響も手伝い、トラックの割合が低くなり、乗用車や一般旅客のニーズが高くなるといえよう。 トラック輸送の需要という面では、中距離フェリーの存在が大きくなっている。北海道と青森を結ぶ津軽海峡フェリーは、2023年10月から青森~函館間で運航していたフェリーを、あえて青森~室蘭に延長した。所要時間が、3時間40分から約7時間に伸びるものの、トラックドライバーの休憩時間確保につながるため評価を得ている。 もちろん、何を運ぶかという観点でもフェリーと地域の結びつきは強い。例えば、宮崎を発着するフェリーは、宮崎で生産された野菜や畜産品を関西や関東といった消費地に運ぶ役割を担っている。関西と四国を結ぶジャンボフェリーは、本四架橋では運べない大型貨物を搬送しており、一次産品だけでなく工業製品の輸送においても、フェリーは地域の経済活動に欠かせない。 中長距離フェリーの果たす役割は、日本の物流だけでなく地域の経済を支える点で、ますます役割が大きくなっていく可能性を秘めている。今回は、中長距離フェリーの物流面を中心に話を進めたが、次回は旅行や観光面にスポットライトを当ててみようと思う。
山本哲也(交通ライター)