奄美での体験が根幹に 人気作家、町田康さん講演 瀬戸内町
奄美2世の芥川賞作家、町田康(こう)さんの講演会が24日、鹿児島県瀬戸内町のきゅら島交流館であった。今年7月に開館30年を迎えた瀬戸内町立図書館・郷土館が30周年記念講演会として開催。町田さんは少年時代に訪れた父親の古里である請島、奄美大島での体験を回顧しつつ、「奄美での体験が自分の根幹をつくる何かになった」と語った。読書の楽しみ方についての助言もあった。
町田さんは1996年に小説「くっすん大黒」で作家デビュー。2000年に「きれぎれ」で芥川賞、02年に「権現の踊り子」で川端康成文学賞、05年「告白」で谷崎潤一郎賞など、これまでに数々の賞を受賞している。 町田さんが講演で語った主な内容は、▽請島出身の父について▽父のおかげで本をよく読むようになり、今の自分がある▽少年時代に訪れた請島と瀬戸内町古仁屋での出来事▽本の読み方(楽しみ方)-など。 「父は『島の人間だ』という意識を強く持っていたと思う」「歳を取っていくと、顔つきや、昔は批判的に捉えていた面も含めて父に似てくる。奄美にルーツのある人間なんだと。系譜というか、そういったものを意識するようになった」と、父親と奄美について語った町田さん。 講演の前日には約半世紀ぶりに請島や古仁屋の街を訪ね、祖父や父親を知る人と出会い、「胸に迫るものがあった」とし、「私は父親を通じ、間接的に島の影響を受けていたのだろう」と話した。また「父親」や「島」を題材とした作品の執筆にも意欲を見せた。 講演は町内外から約170人が聴講した。瀬戸内町立図書館・郷土館は94年7月9日に開館。24年度現在、蔵書数は11万8500冊を超え、23年度の貸出冊数は4万5814冊だった。