【バスケ】「攻めるディフェンス」を取り戻した琉球ゴールデンキングス、6大会連続でCS・SF進出 チームが“小野寺祥太基準”に追い付いた理由
小野寺、まわりの強度が上がり「やりやすい」
中でもチームディフェンスの強度を高い水準のままけん引したのは、琉球のNo.1ディフェンダーである小野寺だ。第3戦ではオフェンスが停滞する時間帯もあったが、この日3スティールを記録した小野寺がディフェンスのビッグプレーで度々流れを押し返した。 以下は桶谷HCの小野寺評である。 「小野寺のディフェンスを信じた結果、自分たちがイニシアチブを取れました。最高の繋ぎをしてくれた。彼が出てる時はほとんど前からプレッシャーを掛けられたので、相手のエントリーも遅くなりました。こういう展開になったのは、最初の小野寺のディフェンスがあったからだと思っています」 このコメントにある「エントリーが遅くなった」という部分が、A東京のリズムを崩す要因となったことは間違いない。A東京はピックを繰り返してズレをつくるオフェンスだが、ハーフコートオフェンスを始める前にプレッシャーを掛けて24秒の時間を削れば、その分ピックの回数を減らすことができる。 琉球のディフェンスを崩し切れず、ハンドラーがペイントタッチした後に押し返されたり、24秒が迫ってミドルシュートを打たざるを得なくなったりする場面もあった。日本代表候補でもあるテーブスとのマッチアップについて、小野寺はこう振り返った。 「テーブス選手はアタックが得意な選手なので、そこをしっかり抑えたいと思っていました。2点のジャンパーは打たれてもOKにしていたので、そこで決められてもチームとして『大丈夫、大丈夫』と切り替えができました。そのおかげで守りやすかったです」 小野寺のディフェンスに対し、テーブスも「皆さんご存知の通り、彼はすごいタフなディフェンダーです。僕の足をちょっとずつ削っていくという仕事をずっとしていました」と強度の高さを認める。一方で、テーブスがマークを振り切ってゴールにダイブするビッグマンに絶妙なパスを落としたり、勝負強い3Pを決めるシーンもあり、シリーズを通して見応えのあるマッチアップだった。 チームメートのディフェンス強度が上がり、自身と同じように前からプレッシャーを掛けるという共通認識が生まれたことは、自らのディフェンスにも影響があるのだろうか。小野寺に聞くと、嬉しそうに笑みを浮かべ、こう答えた。 「だいぶやりやすいですね。全体の強度が上がってくるとヘルプディフェンスも速くなるので、僕も高い位置でマークマンをピックアップしてプレッシャーを掛けやすいです。コミュニケーションの部分でも、チームメートがすごい近くにいるので守りながら会話がしやすく、だいぶ助かっています」 セミファイナルの相手は、3月の天皇杯決勝で69ー117という悪夢のような大敗を喫した千葉J。ピックを繰り返しながらハーフコートでじっくり攻めるA東京とは異なり、富樫勇樹やクリストファー・スミス、ゼイビア・クックスなど個で打開できる選手が多く、戦術として3Pも多く放つ。ハーフコートのオフェンスでは、琉球のビッグマンとのスピードのミスマッチを突くのもうまい。 だからこそ、琉球は各選手がA東京戦で見せたような前から圧力から掛ける“小野寺祥太基準”のディフェンスを、試合を通して貫くことが、勝利への鍵となるはずだ。
長嶺 真輝