【バスケ】「攻めるディフェンス」を取り戻した琉球ゴールデンキングス、6大会連続でCS・SF進出 チームが“小野寺祥太基準”に追い付いた理由
「危機感」から生まれた前への圧力
第3戦の57失点は、琉球にとって今シーズンを通じて最少の数字だ。ダブルオーバータイムにまでもつれ込んだ第1戦は第4Q終了時点で67失点、敗れた第2戦も73失点となり、いずれも今シーズンの平均失点である77.8点を下回った。 以前から「ディフェンスのチーム」というイメージが強い琉球だが、実は今シーズンはその強みに影が差していた。それは数字にも表れ、初優勝を飾った昨シーズンは103.0点でリーグトップだったディフェンシブレーティング(100ポゼッションでの平均失点)は、今シーズンはリーグ10位の108.3点に悪化した。 ビッグマンのフットワークの鈍さを狙われることもあるが、顕著なのは相手のボールマンがバックコートにいる時から激しいプレッシャーを掛けたり、ハーフラインを超えた瞬間にサイドライン際に追い込んだりする「攻めるようなディフェンス」が減ったことである。 昨シーズンは小野寺のほか、今季1試合平均1.9本でスティール王に輝いたコー・フリッピンもいて、ディフェンスからモメンタム(勢い)を作り出す場面が多かった。一方、今シーズンはEASL(東アジアスーパーリーグ)への参戦もあってタフなスケジュールの中、コンディショニングやチーム作りに苦しんだことも影響してか、なかなかチーム全体として高い強度を維持することができていなかった。 それが、このQFでは一変。小野寺や岸本はテーブス、橋本竜馬という相手のハンドラーに絶えずプレッシャーを掛け、今村佳太やローは安藤周人やメインデルらウイング陣との距離を詰めて簡単に3Pを打たせず。ダーラムやジャック・クーリーがスティールしてファストブレイクに持っていく場面も見られ、全体として前への圧力が格段に上がった。レギュラーシーズンに比べ、明らかにモメンタムが生まれる回数が増えたと感じた人も多かっただろう。 何が変化の要因だったのか。岸本に聞いた。 「もちろんコーチ陣からもそこは要求されていましたが、それよりも選手自身が『やらなきゃCSで勝てない』『やらなきゃ試合に出られない』という危機感を持った結果、おのずとこういう形になったんじゃないかと思います。本来、そういう緊張感は自分たちでつくっていくべきものだと思いますし、それがチーム内での競争も生み、いいチャレンジができるようになる。本当にチームとしていい状態だと思います」 Bリーグが開幕して以降、今回を含めた全7回のCSに全て出場している経験が生きて自然と“CS仕様”に仕上がった部分もあるかもしれないが、レギュラーシーズンを厳しい状態で終えたからこそ、よりチーム全体の危機感も強かったのだろう。持ち味である「我慢強さ」が復活している理由を聞かれた岸本は、こうも言った。 「レギュラーシーズンの中で良いことも悪いこともあって、どうしても課題が出た時に修正したり、求められていることとのギャップで葛藤をしたりしますが、CSは勝たなきゃいけない。ミスが起こっても、それに囚われていたら、その間に試合が終わってしまう。みんなが100%試合に集中した結果、『我慢ぽい感じ』になってるのかなと思います。ここを堪えないといけないということを、言葉に出さなくてもみんなが肌感覚で感じている。この3戦は僕自身、それをすごく感じたので、チームとして自信になると思います」