「もう1回行かせて」 続投で戦友助けた健大高崎・石垣 センバツ
◇センバツ高校野球決勝(31日・甲子園) ◇○健大高崎(群馬)3―2報徳学園(兵庫)● 【激闘の決勝戦を写真で】健大高崎-報徳学園 背番号「10」の2年生右腕は頼もしかった。健大高崎の石垣元気は前日の準決勝で116球を投じた疲労をものともせず、チームのために腕を振った。 初回は制球に苦しみ2失点したが、直後に味方が追いついてくれたことで気持ちが楽になった。 最もギアが上がったのは六回。無死二、三塁のピンチを背負ったが、「自分でピンチを作ってしまったので、三振を狙いにいった」。臆することなく立ち向かい、空振り三振と三ゴロで2死を奪った。 「(ストライク)ゾーンで勝負しよう」。小さく息を吐いて、さらに打者に対峙(たいじ)し、最後は外角寄りの直球で見逃し三振に仕留めた。 「やばくなったら任せろよ」。声の主はエースナンバーを背負う同学年の左腕・佐藤龍月(りゅうが)。ライバルであり、互いを高め合える唯一無二の仲間だ。ここまで全4試合を2人の継投で勝ち上がってきた。 だが、佐藤が準々決勝で左手中指を負傷した。「もう1回、長く行かせてください」。万全でない佐藤の負担を減らそうと、八回も続投することを志願した。要所で変化球がさえ、リードを保ったまま九回のマウンドを佐藤に託した。 北海道登別市出身で、高校入学後に持ち前の球威に加えて豊富な変化球も習得した。今大会は準々決勝まで好救援を見せ、先発した準決勝では球速150キロを計測。「大きな公式戦での戦い方、投球の仕方を甲子園の5試合で学んでくれた」と青柳博文監督も成長を認めた。 決勝後にはベンチ前で佐藤とキャッチボールをしながら「ナイスピッチ」と言い合った。もちろんエースナンバーも「つけてみたい」。戦友とともに進化を続ける右腕の伸びしろがまぶしい。【下河辺果歩】