「幸福度が高く、成果も出せるチーム」は、何が違うのか? ポーラ幸せ研究所が見つけた「7か条」
読書自体が、多様性を育んでくれる「対話」になる
──ポーラは「D&Iアワード2023」で最高評価の「ベストワークプレイス」に認定されるなど、ダイバーシティ&インクルージョンの最前線といえます。D&Iの考え方をチームに広げていくうえで、おすすめの本はありますか。 多様性を学ぶというと、ブレイディみかこさんの本がおすすめです。英国の「最底辺保育所」で働きながらライター活動を始めた方です。「エンパシー」という言葉を日本へ広めた『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』をはじめ、ブレイディさんの本は全て読んでいます。 また、経営学者である宇田川元一さんの著書『他者と働く』は、関係性の溝に橋を架けていく「対話」に関して学びが多く、何度も読みました。『社員の力で最高のチームをつくる 1分間エンパワーメント』(ケン・ブランチャード、ジョン・P・カルロス、アラン・ランドルフ著)も、マネジメントの実践編といった位置づけで、対話のヒントを山ほどくれましたね。 多様性を学ぶ際のおすすめは児童書です。たとえば灰谷健次郎さんの『兎の眼』。新任の女性教師が子どもたちとともに成長する姿が描かれています。社会人になってからは、「ひとりの女性の自立の物語」として読むようになりました。読むたびに新たな気づきがある本で、大人にも深い学びを与えてくれる本です。 そのほか、重松清さんの『青い鳥』もよかったし、黒柳徹子さんの幼少期を描いた『窓際のトットちゃん』もおすすめです。トモエ学園の小林先生の、トットちゃんを受け入れられる度量の広さに感服してしまいました。大人になって読むと目線が違ってきますよね。 何の本を読むか以上に、読書自体が多様性を育むことに大いに役立つ「対話」だと考えています。小説でもビジネス書でもいい。その本のどこに共感したのか、どこに反論したのか。自分の心の動きに注目し、書き留めて整理しておくといいと思います。 ■リーダーは「精神的支柱」でないといけない ──最後に、及川さんがめざしているリーダーシップとは、どのようなものですか。 リーダーは、半人前でいいけれど、みんなの「精神的支柱」でないといけないと思うんですよ。足らないところはメンバーにお願いしていきますが、「私たちはここをめざすんだよ」という北極星をちゃんと示すのがリーダーの役割です。 「及川と一緒にここに行ってみたい」と思ってくれる人を増やしたい。だからもっと人間力を磨いて、みんなが心から一緒に行きたいと思うゴールを掲げていきたいですね。その1つが幸福学の研究であり、企業理念の追求です。社員が全員幸せかというと、まだまだ現状に不満をもつ人もいる。 そこで一番大事なのが対話だと考え、当社の取締役たちと全国各地に飛んで、対話プログラムを進めています。社員全員と毎日対話するのは難しくても、リーダーを通じて聞く仕組みを整えることはできます。対話を重ねて企業理念を追求していくと、必ず業績もついてくると思うんですよね。 <及川美紀(おいかわ みき)> 株式会社ポーラ 代表取締役社長 ポーラ幸せ研究所 所長 宮城県石巻市出身。東京女子大学卒。1991年株式会社ポーラ化粧品本舗(現株式会社ポーラ)入社。子育てをしながら30代で埼玉エリアマネージャーに。2009年商品企画部長。12年に執行役員、14年に取締役就任。商品企画、マーケティング、営業などバリューチェーンをすべて経験し、20年1月より代表取締役社長(トータルビューティー事業本部長兼務)。誰もが自分の可能性を拓くことができる社会をミッションに、パーパス経営・ダイバーシティ経営を牽引している。 <flier編集部> 本の要約サービス「flier(フライヤー)」は、「書店に並ぶ本の数が多すぎて、何を読めば良いか分からない」「立ち読みをしたり、書評を読んだりしただけでは、どんな内容の本なのか十分につかめない」というビジネスパーソンの悩みに答え、ビジネス書の新刊や話題のベストセラー、名著の要約を1冊10分で読める形で提供しているサービスです。 通勤時や休憩時間といったスキマ時間を有効活用し、効率良くビジネスのヒントやスキル、教養を身につけたいビジネスパーソンに利用されており、社員教育の一環として法人契約する企業も増えています。 このほか、オンライン読書コミュニティ「flier book labo」の運営など、フライヤーはビジネスパーソンの学びを応援しています。