「収入源も、影響力も変わった」 米オリンピック選手はSNSで稼ぐ
「キャリアも変わった。収入源も、影響力もね」
ごく最近になってコンテンツクリエイターとして成功したオリンピック選手もいる。女子ラグビーアメリカ代表選手のイロナ・マーは2021年の東京2020でオリンピック初出場を果たし、選手村の様子をユーモアたっぷりにとらえた投稿で瞬く間に時の人となった。現在TikTokで110万人のフォロワーを有するオリンピック選手兼コンテンツクリエイターは、年間を通じてアメリカ代表チームの裏側をフォロワーに披露している。2024年オリンピックの調整中ということで、今回の取材ではマーからコメントはもらえなかったが、2023年のNBCスポーツとの取材ではTikTokでの成功で人生と競技生活が変わったと語っていた。 「始めた一番の目的は、この競技にもっと関心を持ってもらうためだった」と本人。「オリンピックに行くと別人になって帰って来る、なんてよく言うけど、私の場合は別人になったというより、大勢のフォロワーがついて前より知名度が上がった。間違いなく私自身だけじゃなく、キャリアも変わった。収入源も、影響力もね」。 アーティスティック・スイミングの世界の知名度が低いことは、ダニ・ラミレスも前々から承知していた。以前はシンクロナイズド・スイミングと呼ばれていたこの競技は、オリンピック競技に採用されてからまだ40年しか経っていない。だが2023年、ラミレスはそうした情報格差を埋めることにチャレンジした。現在オリンピックで期待のかかるラミレスも、インターネットでは40万人以上のフォロワーを抱える人気ASMRクリエイターだ。アーティスティック・スイミング選手は一糸乱れぬ髪型にするためにKnox社のゼラチンパウダーを使うが、50万人近いユーザーがラミレスのページにアクセスし、ゼラチンで固めた髪を爪ではがすラミレスの動画を閲覧した。 コンテンツのユニークさはラミレス本人も自覚しているが、自分のASMR動画がアーティスティック・スイミングを知るきっかけになると考えている。「パッと見ただけではものすごく複雑に見えるかもしれないけど」と本人。「実際はどうなっているのか詳しく知ると、今まで知らなかった競技の魅力にはまっていく。そういうところに人々は惹きつけられるのよ。たとえ奇抜なヘアスタイルが入口だとしても、多くの人に競技を紹介するチャンスをもらえて本当にありがたいわ」。 競技の認知度はささやかかもしれないが、ローリングストーン誌が取材した選手はみな、知名度が増えたことで収入も大きく変わったと力説した。女子バスケットボールがいい例だ。2024年、WNBAはファンの関心が高まったことで試合のたびに満員御礼。26年ぶりの過去最多観客動員を記録した。エイジャ・ウィルソンやケイトリン・クラークをはじめとする選手は誰もが知る有名人となり、100万ドルのスポンサー契約も結んだ。数週間後には2024年オリンピックが様々な角度から報じられることになるが、数百万人の忠実なファンはウッドホールやラミレス、マーをはじめとするクリエイターが伝える舞台裏にも目が釘付けになるだろう。 「僕らにとっては毎日のことだから、ごく当たり前になってるけど、僕らのスケジュールや練習内容、日常生活が面白がられて、人々の関心を集めている」とウッドホールは言う。「世界中の人たちが見たい、知りたいことで、みんながウィンウィンになれることを裏付けていると思うよ」。
CT JONES