【渋沢栄一のひ孫が提言】私たちが暮らしに不安を感じる2つの理由、問題解決に必要なことは?
ほかに、これまで資源としては使われてこなかったオイルサンド(石油を含んだ砂)や、不純物をたくさん含んだオリノコ重油、オイルシェール(油を含んだ岩石)もありますが、それらをすべて足しても、石油資源の合計は1兆1896億立方メートルです。富士山の体積が1兆4000億ですから、実は富士山1杯分の石油資源も、もう残されていないというのが、今の地球なのです。 エネルギーの中心が石炭から石油に移行したのは1950年代です。しかし石油は、生物やプランクトンの死骸が地下で何億年もかけて変質したものです。地球が何億年もかけて作った石油を、人類は約70年で限界が見えるほど消費してしまったわけです。 ● 人口が90億人に達した世界で いままで通りの資源利用が可能か 水の問題もあります。図3は、海まで含めた世界の水の総量を表しています。 実は、地球上に水はこれぐらいしかありません。水の豊かな日本に住んでいると想像しにくいですが、人類が農業や飲み水に使える水はほんのわずかなのです。この少ない水だけで、人類は水を飲み、食料を作っていかなければなりません。もちろん、この水を使えるのはすべての動植物も含まれます。人類だけではありません。 人類が抱える問題はまだあります。人口の問題です。1900年から2020年の間に、人類の総人口は約16億から約75億人になりました。そのカーブは、1800年を超えたあたりから、垂直に立ち上がってきています。世界中で科学・医療技術が発達したおかげで、子どもたちが死なずに済むようになったことがその理由の1つです。
その結果、多くの国でどんどん人口が増えています。今後は少なくとも世界人口は90億は超えるだろうと予想されています。膨れ上がった人類がこれまで同様に食料、木材、化石燃料を消費していけば地球がもたないことは先に述べたとおりです。 私たちはもともと、地球上に無数いる生物の中の1つとして、地球の成長量の一部をもらいながら生きてきました。地球の利息の中で生きる存在でした。しかし、このわずか60年あまりの間に、利息をすべて使い切り、それでも足りずに地球の元金を食い尽くす存在に変わってしまったのです。「元金を食い尽くす」とは、地球を人間のみならず、生物たちが生きていけない状況にしてしまうということです。 ● 付加価値の高い工業製品を輸出し 安い食料を輸入する自由貿易の恵み 日本を含め先進国と言われる国々は、人間だけの豊かで便利な暮らしを求めて、化石燃料を使い、地球環境を搾取し、やりたいようにやってきました。しかし、その暮らし方では地球が持たないことが明らかになった。つまり今の先進国の暮らしの在り方が、明らかに間違っているということです。 もちろん、現在の暮らしのすべてを否定するわけではありません。しかし、暮らし方の転換を図らなくてはならない岐路に人類が立たされているのは明らかです。 地球規模の環境問題は、私たちの日々の暮らしと無関係ではありません。