幸福学研究とは ── いかにして世界中、日本中の人が幸せな世界を創るか
幸せの4つの因子
ではどうすれば、「幸せ」をスペック(設計変数)として考慮したカメラを設計できるかというと、「幸せ」の要素である4つの因子を考慮したカメラを作ればいいと考えています。4つの因子については追って詳しく解説するつもりですが、簡単に述べると以下の表の通りです。
この4つを考慮したカメラ。いかがでしょう? まず、1。ユーザーが、夢や目標や強みを持つようなカメラ。思いつきますか? ハードウエアだけを考えていても思いつかないかもしれません。しかし、カメラを買ったユーザーが、インターネットのカメラサークルのようなものに入ることをイメージしてみてください。撮った写真を見せ合って楽しみながらお互いを高め合うようなコミュニティーが、カメラとセットでデザイン(設計)されていたら。上の4つの因子をみたすことが可能です。 つまり、多様な者が専門分野を超え、それぞれの強みを生かしながら協力し合えば、あらゆる製品やサービスは「幸せな○○」としてデザインできると、私は考えています。 このため、最近は、幸せなものづくり、幸せなサービスづくり、幸せな組織づくり(幸せな経営)、幸せなまちづくりなど、幸せというパラメータを考慮して様々なシステムをデザインしマネジメントする研究や活動を行っています。
幸せな働き方研究 ──労働時間短縮ではなく、働いている時間を生き生きワクワクに
最近では、幸せな働き方の研究に力を入れています。幸福経営学です。働き方改革や健康経営が注目される今、幸せな社員は不幸せな社員よりも創造性が3倍高い、生産性が30%高い、欠勤率が低い、離職率が低いといった研究結果が続々と出てきています。ですから、幸福度を高めるような施策を行うことによって、幸福度とエンゲージメント(仕事への没入)、モチベーション、リーダーシップ能力、そして従業員満足度を高めていこうという研究です。働き方改革のためには、労働時間を短縮すればいいのではなく、働いている時間を生き生きワクワクしたものにすべきなのです。 たとえば、「みんなで幸せでい続ける経営研究会」という会を、10社以上の大企業の役員クラスの方々と共に開催しています。法政大学の坂本光司先生の『日本で一番大切にしたい会社』シリーズ(あさ出版)には、すばらしく幸せな中小企業が載っていますが、幸せな大企業の実現は難しいのが現状です。ですから、社員みんなが幸せな大企業の作り方についての研究を行っています。 幸せな地域づくりや地域活性化の研究も行っています。issue+designの筧裕介さんの著書『みんなでつくる総合計画:高知県佐川町流ソーシャルデザイン』には、高知県佐川町の幸せなまちづくりの事例が載っています。私も堀見和道町長らとともに「しあわせ会議」に参加するなどして協力しました。同じくissue+designの地域しあわせラボでは、全国幸せ調査も行いました。ショッキングなことに、経済的な成長を重視した都会よりも、温かい人のつながりのある沖縄・九州の方が総合的な幸福度が高いという結果を得ました。