ソニー、XRソリューションの新ブランド“XYN(ジン)”を発表。空間コンテンツクリエイター向けプロダクトをリリース
ソニーは、 “空間コンテンツ制作の支援を行うソリューション群” として新しいブランド「XYN(ジン)」の立ち上げを発表。それにともない、空間コンテンツのクリエイターへ向けたプロダクトの開発を発表した。 この度発表された新ブランド「XYN(ジン)」について、同社は “空間コンテンツ制作の支援を行うソフト・ハードが統合されたソリューション群” と説明。本ブランドを通じ、空間コンテンツクリエイターの制作作業をアシストするプロダクトとして「XYN Headset」「XYN空間キャプチャーソリューション」「XYN Motion STUDIO」のリリースを予定する。 なお、ブランド名の由来は3次元をあらわす「X,Y,Z」で、最後の文字を「新しい」「新世代」といった意味のN(New)に変えることで、「空間を新たに拡張していく」という想いを込めたとのこと。コンセプトとしてNext Detention of Creativity(創造のまだ見ぬ次元へ)を掲げており、エンタメや産業分野のみならず、企業や自治体といった幅広いジャンルで活躍する空間コンテンツのクリエイターを主なターゲットとして設定。「手軽・効率性・高品質」を掲げたソリューションを提供するという。 XYN Headsetは、新しい空間コンテンツ制作への適応をコンセプトとするXRヘッドマウントディスプレイ。同カテゴリのアイテムとして、同社は既に「SRH-S1」を発表しているが、SRH-S1がシーメンス社のMXに対応した3D CADのワークフローヘッドセットであるのに対し、XYN Headsetではさまざまなアプリケーションへのサポートと、より広いエンタメ、産業分野のユーザーが利用を想定しているとのこと。 4KマイクロOLEDのディスプレイや、ビデオシースルー機能はSRH-S1を踏襲。また、フロントディスプレイ部は跳ね上げ式を採用することでユーザビリティにも配慮した。記事執筆時点では開発発表の段階だとしており、そのほかの詳細なスペックは追って公開される。 XYN空間キャプチャーソリューションは、ソニー独自の生成アルゴリズムを搭載したCG制作ソリューション。ミラーレスカメラ等で撮影した画像から現実の物体や空間をリアルな3DCGに置き換えることができる。誰でも適切な撮影を可能にする撮影アシスタントアプリを提供するほか、他社製のヘッドセットや空間再現ディスプレイでも簡単に活用できるような機能を搭載する。 複数の写真から3DCGオブジェクトを生成するのが特徴で、オブジェクトのみならず、広い空間や街中を3DCG化することも可能。バーチャルプロダクション用の背景CG制作を想定しているとのことで、映像制作やVFX、映画・ゲームのプロップ(小道具)、デジタルツインのシミュレーションのほか、貴重な美術品をデジタル化するデジタルアーカイブにも活用することができる。今後、詳細を順次公開しながら、実際にユーザーが体験できる場を設けつつ商用化を目指すとのこと。 実際の使い方としては、ミラーレスカメラの上に設置したスマートフォンでモバイルアシスタントアプリを起動。撮影したオブジェクトをスマホ画面上にビジュアライズする仕組みとなっている。適切なエリアを適切な角度で撮影できるようアプリがガイドし、誰が使用しても一定の品質を保って撮影できると説明している。 また、撮影したデータをクラウドにアップロードすると、数クリックで簡単に3DCGとして描き出すことができるという。さらにプレイバック機能を搭載しており、ヘッドセットを用いることで、その場ですぐに3DCGを確認することができる。ソニーの製品のみならず、他社製のディスプレイに利用できる点も特徴だという。 XYN Motion STUDIOは、同社のモバイルモーショントラッカー「mocopi」との連携を想定したPC用のモーションキャプチャーソフト。月額税込1,100円の月額サブスクリプション制で、3月下旬のリリースを予定している。従来はスマートフォンとの連携が前提だったmocopiだが、新たに発売されるPC用のセンサーデータレシーバー「QM-PR1」(税込16,500円/ソニーストア販売価格/3月下旬発売予定)との組み合わせでPCとの直接接続を実現。トラッキング精度の向上と多彩な編集機能を備えた。 mocopiについても従来の最大6点センサーから、mocopiを2セット使用することで最大12点まで対応する「mocopiプロフェッショナルモード」をリリース予定。これまでの頭/腰/手首/足首の6点に加え、両腕/太腿/手の甲または足の甲の6点を追加することで、従来より細かな体の動きのキャプチャーを実現させた。また、センサー装着部位を増やしたことで、6基のセンサーではフォローが難しかった「ゆっくりとした動き」のキャプチャーにも対応するという。こちらも現時点では開発段階で、3月下旬のリリースを目指す。 PC用ソフトXYN Motion STUDIOは、キャプチャー機能と編集機能の大きく2つのファンクションを搭載。キャプチャー機能は、PCへの直接接続によって精度を向上。さらに、外部カメラを入力として使用する機能が追加されており、従来のモーションセンサーのみのキャプチャーでは動作精度の向上に限界があったが、センサーと外部カメラを融合することで解決を図ったという。一つ一つのモーションが元の動きにより忠実になったことによってキャプチャー後の手直しを最小化できるとしており、制作現場のワークフローでも十分に利用できるとアピールしている。 また、従来のmocopiは基本的にリアルタイムソリューションだったが、センサーデータが持っているさまざまなローデータを用いて一度キャプチャーしたモーションを補正する機能も搭載。これによって、足の地面との設置具合をより自然に改善するといったことも可能になっているという。 編集機能については、通常の動画編集のような要領で、キャプチャーしたモーションをタイムライン上に並べ編集やトリミングを簡単に行えるように。また、これまでのmocopi開発で培った技術を用いた「モーション自動生成アルゴリズム」を導入。2つのモーション間に空白があっても、存在しないモーションを自動生成し自然につなげることが可能に。 つくられたモーションは、クラウドのデータベースにアップロードしてバックアップが可能。ユーザーによる任意のタグ付けや、ソニーのアルゴリズムで自動判別したカテゴリに基づいて自動保存することもできる。これによって、作成したモーションを後から便利に活用できる。 なお、キャプチャー機能は、従来のmocopiPCアプリケーションと同様の機能となっており、編集機能はいらないがキャプチャー機能だけ12点バージョンを使いたいというユーザーには、これまで通りのPCアプリで活用することができる。また、専用レシーバーはあくまでもmocopiとPCを直接つなぐためのものであるため、2024年11月にリリースしたmocopi VRの環境でも利用できるほか、従来通りスマホを介したソリューションもサポートする。
編集部:岡本雄