働き方改革がうまくいく企業が実施する「休み方改革」とは
「働き方改革」の取り組みがスタートして5年、あなたの働き方は本当に変わったでしょうか。きちんと「休日」をとっていますか? 「休日」に、何をして過ごしていますか? 日本人は、「休むこと」も「休日の過ごし方」も下手であると、800社以上の働き方改革を支援してきた越川慎司氏は指摘します。 【図】日本人が働く中で幸福を感じる出来事 世界のトップビジネスパーソンが実践している、仕事のパフォーマンスを上げる「休み方」とは、どのようなものなのでしょうか。 ※本稿は越川慎司著『世界の一流は「休日」に何をしているのか』(クロスメディア・パブリッシング)より、一部を抜粋編集したものです。
日本人の有給休暇取得率56.6%という現実
日本企業で「働き方改革」の取り組みが本格スタートして5年が経ちましたが、日本のビジネスパーソンの働き方は、どのように変わったのでしょうか? 2019年の労働基準法の改正によって、残業は原則として月45時間、年360時間を超えてはならない......という時間外労働の上限規制が設けられました。 その結果、何が起こったかといえば、企業は「残業の削減」ばかりに目を向けることになり、「残業ができなくなって、逆に仕事が忙しくなった」と感じている人が増えています。 働き方改革の目的は、「労働者がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会の実現」にありますが、現時点では、十分な成果は出ていません。 労働政策研究・研修機構の調査(2021年)によると、日本人の年次有給休暇の取得率は「56.6%」にとどまっています。残業時間は制限されても、忙しいことに変わりはなく、休日も増えていない......というのが、日本のビジネスパーソンの実情です。 まずは自分が置かれている状況を冷静に見つめ直し、休みを取りにくい原因を自分のできる範囲でクリアしていくことが、充実した休日を手に入れるための最初の一歩となります。
コロナ禍の「後遺症」が企業に蔓延
コロナ禍は、ビジネスパーソンの仕事や働き方に多大な影響を及ぼしましたが、その余波は、日本の各企業に「後遺症」のように蔓延しています。 その代表的な事例には、次のような3つがあります。 【後遺症①】リモートワークの普及で「隠れ残業」が増加 コロナ禍によって、日本企業では不可能と考えられていたリモートワークが飛躍的に浸透しましたが、その普及に伴って、思わぬ弊害が起こっています。 在宅勤務が増えたことで、通勤時間はカットできましたが、自宅で仕事をしているとオンとオフの線引きが難しくなり、上司から「早く帰れ」と言われることもないため、「隠れ残業」が増えているのです。 【後遺症②】コロナ前よりも忙しくなって、体調を崩す人が急増中 コロナ禍によるビジネスの抑制が一段落した段階で、今度は深刻な人手不足とインフレに見舞われたことによって、現在は多くのビジネスパーソンがコロナ前よりも多忙な毎日を余儀なくされています。 仕事の忙しさに伴う疲労やストレス、リモートワークによる孤立化などが原因となって、メンタルをやられたり、体調を崩すビジネスパーソンが増えています。 【後遺症③】緊急事態宣言の影響で有給休暇を取らない人が続出 有給休暇の取得率が「56.6%」と低迷している背景には、コロナ禍も深く関係しています。決定的な要因は、2020年4月から2021年9月まで、計4回にわたって長期的に発出された「緊急事態宣言」です。 有給休暇は夏季休暇や年末年始休暇の前後に取得する人が多い傾向にありますが、緊急事態宣言下では、不要不急の外出を控える必要があったため、家族で旅行に行ったり、実家に帰省することができず、有給休暇を取らない人が多かったのです。 緊急事態宣言が収束した現在でもリモートワークやハイブリッド勤務(出社とリモートの併用)が継続しているため、何となく有給休暇を取りづらかったり、取りそびれたり、休暇を申請する習慣がなくなった人も少なくないといいます。 こうしたコロナ禍の後遺症が発端となって、オーバーワーク(働き過ぎ)になっていないか、日ごろの働き方を冷静に見つめ直す必要があります。