鈴木静岡県知事 28日で就任半年 リニア問題打開へ「スピード感」発揮/衆院選では候補者応援が物議
鈴木康友知事は28日で知事就任から半年を迎える。膠着(こうちゃく)していたリニア中央新幹線問題の打開に向けて国土交通相やJR東海社長と相次いで会談し、次期総合計画策定を1年前倒しするなど「スピード感」を発揮。知事選で対立した首長や県議会との融和も進め、前知事との違いを見せるが、10月の衆院選候補者の応援が物議を醸すなど、徐々に「政治家知事」の側面も見えつつある。 【表】鈴木知事就任半年の主な動き ■巧遅より拙速 「できる所からスピード感を持って進める。(知事選)公約は重要政策を盛り込んだ総合計画を策定し、着実に進める」。26日の定例記者会見で知事は事業着手の素早さに胸を張った。リニア問題では国交省やJR東海のトップ、大井川流域市町との関係構築を進めた。ただ、争点の一つだった浜松市の新野球場整備は、浜松市と民間を加えた協議会設置を表明したが、その後の進展は見えない。 ■政治家知事 「他県との関係構築のため優先的に出席する考え」(関係者)と全国知事会議や中部圏、関東地方の会議など6回の会議に全て出席。7月下旬以降、新年度予算編成の要望で計8省庁に出向いた。10月の衆院選では自民党派閥の裏金問題で公認が見送られた2候補を含む4候補を応援演説。知事選で支えた連合静岡、県内野党関係者が苦言を呈し、県民の批判も寄せられた。自民関係者からは「逆風の中で義理堅い」「重鎮との関係は県にプラスもあるはず」との声もある。 ■オール静岡 他地域に先駆け9月、多くの市町長が知事選で対立候補支持を表明した伊豆で地域サミットを開催し、「浜松重視」との懸念払拭に動いた。県議会との関係構築に向けては「丁寧に対応していく」との姿勢で、「徐々に連携ができつつある」と強調する。県議会9月定例会に提出を試みた副知事人事案は、自民会派から反発を受けて見送ることになり意思疎通に課題が見えた。今後、十分な連携ができるかは未知数だ。 ■独自色 知事は新年度予算編成に向けて次期総合計画の「経営方針」策定に着手し、県民の実感を重視した県政運営を打ち出した。有識者に助言を求めるフェロー制度や、私的諮問会議「未来創造会議」を設置し、スタートアップ(新興企業)支援や独自色の強い政策の導入に向けた素地を整える。 「まだ点数を付ける段階にない。新年度予算編成や総合計画の内容を見てからだ」。各種業界団体からの要望を受ける自民会派幹部からは行財政改革断行への警戒感もにじむ。新年度予算や組織改編に、どれだけ“鈴木カラー”が発揮されるか注目が集まる。
静岡新聞社