フランス大統領は正気なのか、選挙の賭けは理解に苦しむとG7首脳
(ブルームバーグ): マクロン仏大統領は控えめな性格ではない。主要7カ国(G7)首脳会議では大抵、一番声の大きな人物がマクロン氏だ。しかし今は違う。マクロン氏の存在感はかなり薄れてしまったようだ。
かつては自分をローマ神話のジュピターにたとえたマクロン氏。南イタリアで開催されるG7サミットの会場入りでは、いつになくぼやけた表情だった。7人の首脳のうちレームダック中のレームダックとされるのは、敗北が予想されている選挙実施に打って出たスナク英首相のはずだった。しかし欧州議会選挙でそれも変わった。マクロン大統領もスナク氏同様、わざわざ選挙の海に飛び込んだからだ。
今のマクロン氏は本領を発揮する状況ではない。もう一人のG7リーダー、カナダのトルドー首相と2国間協議を終えた後は、自分が作り出した政治的な大混乱と格闘するため、予定を切り上げて現地を出発する。フランスがG7議長国だった2019年、サミット議長のマクロン氏は変化球を投げては出席者を当惑させたものだった。今回当惑しているのはマクロン氏自身だ。
対照的に最も楽しそうに見えたのが、サミット議長のメローニ伊首相だ。メローニ氏はこの瞬間を逃すまいと、首脳会議が行われているリゾートの外に出てセルフィー(自撮り)に興じた。
欧州の首脳らはマクロン氏の行動に当惑を隠せない。欧州議会選挙で与党連合がマリーヌ・ルペン氏の極右政党・国民連合(RN)に大敗した直後、マクロン氏は選挙実施を呼び掛けた。いったい何を達成しようとしているのか、理解に苦しんでいる。
安全保障にリスクも
この決定はフランスだけでなく大陸全体の安全保障にリスクをもたらすと、2人の欧州首脳は匿名で語った。
このうち1人は選挙のタイミングを問題視している。北大西洋条約機構(NATO)の年次総会直前というタイミングに選挙を決定するとは、マクロン氏は正気なのかと、この1人は話した。
仏フィガロ紙は今週、この疑問を直接マクロン氏にぶつけた。同氏の答えは「まったくの正気だ。それは保証する」だった。