「娘の初潮」と父親はどう向き合う? 照れくさい、見て見ぬふりではなぜダメなのか【パパ記者が女性産婦人科医に訊く】
小学校2~3年生ころが説明のチャンス
では、わが子に生理を説明するための準備(学びと備え)はいつごろから始めればいいのでしょうか。結論から言えば、早いほうがいいと種部さんは教えてくれました。 「月経の問題を、恥ずかしがらずに質問してくれる時期は、女子が小学校2~3年生くらいまでです。 初経が発来する人の割合は小5が29.5%、小6が57%となっています(東京都幼稚園・小・中・高・心障性教育研究会「児童の性」より)。 でも、このくらいの年代になると口をつぐむ子のほうが多いです。その意味で、小学校2~3年生のころがチャンスです。子どもが何度も聞いてくるとは限りません。聞くタイミングは1回だけかもしれません。最初にして最後のチャンスを逃さないためも準備は早く始めたほうがいいです。 仮に、複数の娘さんがいて、上の子の時にはチャンスを逃してしまった場合でも下の子の時に説明を頑張ってください。下の子に向かって話すふりをして上の子にも伝えるのです。 月経の問題を下の子に話す父親の姿を上の子はどこかで見ています。その姿を見て『親に話してもいいんだ』と上の子が感じてくれる可能性があります。 困った時に援助を求める姿勢と判断力を持たせる、その状態を子育てのゴールと考えるのであれば、家庭内での月経の扱い方はとても重要です。 月経の問題すら親に言えない家庭環境で、性的暴力、望まない妊娠など、より大きな問題に直面した時、どうして子どもは親に相談できるでしょうか」(種部さん) 生理の問題で気まずさを感じ逃げるような父親に娘は、成長と共に何も語らなくなるということですね。ただ、最初にして最後かもしれない絶好の質問が大勢の人前など、思いがけない瞬間に飛んでくる場合も考えられます。その場合は、どうすればいいのでしょう。 「『すごく大事な質問だから後で教えてあげる』と伝えてあげてください。 プライベートゾーンと言って、勝手に触ってはいけない・触らせてはいけない体の部分が話が出てくるから、周りの人は聞きたくないかもしれない。そういうプライベートゾーンの話を、大人は人前でしゃべらないので家に帰ってから教えてあげると伝えてあげてください。そうすれば、プライベートゾーンの概念も伝えられます。 ただ、話が戻りますが、その時、顔色を変えて困惑したり恥ずかしがったりせず堂々と伝えてあげてください。堂々とするためにも、いろいろな本などで学び準備を始めてください。 また、説明のタイミグを逃してしまった娘さんのいるご家庭では、お父さんご自身が学びに使った本をトイレに置いておくと子どもが一人で読む可能性が高いです。その手の本が、トイレに置いてあるだけでも、わが家ではタブーではないんだというメッセージを娘さんに伝えられます。ぜひ試してみてください」(種部さん) 以上が、種部さんに伺った「娘の生理に向き合う父親の心構え」でした。一度きりしかないかもしれない機会に向けて準備せよという話でしたが、いかがでしたでしょうか。 わが子がもっと大きくなって何かの問題に直面した時、助けを求めてもらえるか否かの鍵を父親が握っていると考えて、ぜひ備えを開始しましょう。 【お話を伺ったのは】種部恭子 | 産婦人科医・富山県議会議員 女性クリニックWe! TOYAMA代表・富山県議会議員。その他、内閣府男女共同参画会議 女性に対する暴力に関する専門調査会委員、日本産婦人科医会常務理事、富山県医師会常任理事などを務める。 参考: 父と娘の生理に関する意識調査 – 株式会社エムティーアイ
取材・文/坂本正敬