教職調整額10%以上に引き上げへ でも教育現場からは「業務減を」
「ブラック職場」と言われる公立学校教員の給与制度が半世紀ぶりに見直されることになりそうだ。文部科学相の諮問機関・中央教育審議会(中教審)の特別部会が、時間外勤務手当(残業代)を支払わない代わりに支給される「教職調整額」の割合を現行の給与月額4%から10%以上に引き上げる案を検討している。ところが、教育現場からは「給料増より業務減を」と冷めた声が上がる。 【グラフでみる】ある教員の一日 4日に開かれた会合では、教員給与特別措置法(給特法)に規定された現行の教職調整額のあり方が論点の一つとなった。 「(残業代を払えば)長時間労働を助長する危険がある。業務の質の違いを無視した不公平も生じかねない」 教員の業務は自発性、創造性が必要とされる特殊性があり、一般的な残業のルールがなじまないと考えられてきた。委員からは、そうした給特法の考え方を維持した上で教職調整額の引き上げを求める意見が大半を占めた。 給特法が施行されたのは1972年。教職調整額を4%にした根拠は、同法制定前の66年時点の労働時間だ。当時の教員の平均残業時間は月約8時間で、そこから算出した。 しかし、多忙化でその根拠は大きく揺らいでいる。文科省が2022年度に実施した公立校教員の勤務実態調査では、月平均残業時間は小学校で約41時間、中学校で約58時間と推計される。 現行の給与体系を維持する方向で進む議論を、現職の教員はどう見ているのか。 「正直、調整額引き上げにインパクトはない。給料は今のままでいいので人員を増やし、業務を減らしてほしい」。北陸地方の公立小で低学年を担任する女性教諭(35)は、教職調整額引き上げで離職に歯止めがかかるとは感じないという。 勤務先には時間外勤務の時間数を管理職に申告する仕組みがあり、当初は正直に申告していたが、あるとき「月40時間程度に抑えられないか」と言われた。その後は虚偽の時間を申告し、「持ち帰り残業」も増やした。保育園に通う我が子と十分向き合えているか、不安になるという。【井川加菜美、斎藤文太郎】