「副業は可能ですか?」入社前から問う若者の盲点 副業で成功する人・失敗する人の違い 安易な副業は自分の成長を妨げる
特に昨今は「人的資本への投資」が重視される世の中だ。会社側が教育に力を入れてくれているのに、その機会を台無しにするような社員なら評価も落とすことだろう(たとえ成果評価が高くても、能力評価が落ちるリスクがある)。 このように会社からは評価されず、副業でも大した収入を得られず、結局どちらにも注力できなくなるというわけだ。それに、たとえうまくいったとしても、副業を5年、10年と長く続けることは難しいのが現実。結局はどこかで頓挫してしまうケースが多い。
■お金を稼ぐことは簡単ではない 冒頭で紹介した「いつから副業できますか?」と聞いた内定者は、何を理解できていなかったのか。 それは「お金を稼ぐことの大変さ」である。私は20年近く営業コンサルタントをしてきた。だから断言できる。どんなに優れた自社商品であっても、売るのは簡単ではない。一度でも営業を経験した人なら、その難しさを痛感しているはずだ。 したがって、稼ぐことを甘く考える人は、 (1)本業で成果を出せない
(2)副業に手を出す (3)副業がうまくいっちゃう という、都合のいい夢を見てしまう。さらに、「副業で独立できちゃう」「副業のノウハウが本業でも活きちゃう」などと、ありもしない幻想に浸ることになる。 実際には、こうしたシナリオがうまくいくのはごく一部の限られた人だ。大半の人は時間とお金を費やして、本来の目的を見失ってしまう。 企業であれば、本業(コアコンピタンス)以外の事業に手を出す「多角化戦略」は慎重に検討すべきことだ。まさに禁じ手であるとも言われる。かつてはライブドアやライザップが大胆な多角化戦略を試みてハデに失敗している。
このように、たとえ本業が好調であったとしても、いろいろな事業に手を出して成功させることは、とても難しいのだ。 まして個人の場合、余力もリスク許容度も企業ほど潤沢ではない。安易に「稼ぎやすそう」というだけで副業に手を出すのは、危険極まりないといえよう。 ■本業に集中できないなら転職せよ 基本は本業に全力を注ぐことだ。 しっかり成果を出して、まずは会社に認められること。そして十分に余裕ができて、ご縁やタイミングが合うならば、副業に手を出す。そのほうがはるかに建設的だ。実際、Mさんのようなタイプはそうしたプロセスを踏み、結果として自らの専門性に拍車をかけている。
もし、どうしても本業で成果が出ないのならば、副業を考えるより本業そのものを変えるほうが賢明だ。 まず思いつくのが転職。さらに報酬を増やしたい。もっとやりがいのある仕事がしたい。というのなら、転職先でそれを求めよう。副業に手を出したり、起業するよりは、はるかに安全だ。 「本業では成功できないが、副業ならすぐに稼げるかも」という発想は、あまりにも甘い。ロマンのない話で申し訳ないが、謙虚な気持ちで目の前の仕事に力を注ぐことを強くおススメする。
横山 信弘 :経営コラムニスト