Bチームから這い上がり異例の主将へ…大一番で味わった“地獄”「怖くてキツかった」
「事実上の決勝戦」を制し、佐藤の目に溢れた涙
そして選手権予選と今大会を通じて、佐藤は闘将として圧倒的な存在感をチームで放っている。苦しい時に誰よりも大きな声を張り上げ、失点の際は全員を集めて鋭い目つきで問題点を指摘したり、チーム全体の顔を上げる声かけをしたりするなど、精神的な支柱としてチームを支えた。 3回戦の大津(熊本)戦では相手の圧倒的な攻撃を前に、何度も空中戦で競り勝ったり、球際を制して相手の侵入を阻んだりと気迫の守備を連発。それでもセットプレーの崩れからCB五嶋夏生に1点を決められたが、ラインを下げることなく、かつ相手のロングボールをはじき返し続けて「事実上の決勝戦」を2-1で制した。 タイムアップの瞬間、泣き崩れる大津の選手たちの横で、佐藤も溢れる涙を堪えきれなかった。 「チームメイトに救われたという思いで涙が出ました。エノさん(榎本監督)から『今日、勝てばお前らの殻を2個、3個破ることができる』と言われていたので、もう気持ちで戦いました。でも、正直これまでで一番きつかった試合でした。僕たちは球際、切り替え、運動量はどのチームにも負けていない自信があるし、実際にその部分では負けてこなかったのですが、今日は前半の立ち上がりから大津さんはバチバチ来て、今まで体感したことのない強度とスピードで、普段のプレミアよりも断然キツかったです。特に最後の10分は地獄のような時間で、相手の攻撃のスピードも『ここでもう1つギアが上がるの?』と思うほど一気に上がってきたので怖くてキツかったです」 まさに極度の緊張感の中で戦い、肉体的にも精神的にも激しく消耗しながらも、最後の最後まで集中力を切らさずに、チームを鼓舞し続けた。だからこそ、タイムアップの笛を聴いて一気に緊張感から解き放たれ、大号泣につながったという、実に「魂のCB」である彼らしい瞬間だった。 この涙も彼が1日1日を丁寧に、献身的に積み重ねてきたからこそ流せたもの。下から這い上がってきた不屈の男は、「セカンドチームで一緒に戦ってきた仲間たちがスタンドで必死に声援を送ってくれる姿を見て、もう何がなんでも頑張らないといけないという気持ちにさせてくれました」と、最後まで彼らしい言動を続けてフクダ電子アリーナをあとにした。
FOOTBALL ZONE編集部