「ショックを受けた」「下品すぎる」Appleのプロモーション動画に批判殺到。しかし、燃えたのはほぼ日本だけその理由は?
後にも書くが、日本の美徳と、海外のそれはイコールとは限らない。そのため筆者は、なかなか日本人ユーザーの「お気持ち」には反応しないのでは――と感じていたが、意外にもAppleの動きは早かった。 アメリカの広告業界メディア「AdAge」は5月9日、「Apple apologizes for IPad Pro ad that ‘missed the mark’ (AppleはiPad Proの広告を的外れだったと謝罪した)」と題したウェブ記事を掲載し、担当者の謝罪コメントを伝えた。この記事については、日本でも10日、各メディアが報じている。
ひとまずの「謝罪」を受けて、沈静化しそうな今回の事案だが、なぜここまで炎上したのか。すでにネット上には、さまざまな「分析」が拡散されている。そこへ「炎上ウォッチャー」である筆者の考察を掛け合わせると、大きく5つの要因があるように感じる。 (要因1)ものを大切にする価値観 (要因2)相次ぐ値上げへの反発 (要因3)比較広告の受け入れられにくさ (要因4)「らしさ」という幻影の弊害 (要因5)そもそも意図がわからない
ひとつずつ見ていこう。 まずは「ものを大切にする価値観」。とくに日本においては、一度買った道具は、修理を繰り返してでも、長く愛用しようとする考え方が根強い。国民性でもある「もったいない」精神は、ノーベル平和賞受賞者の故ワンガリ・マータイ氏によって「MOTTAINAI」として輸出されるほどで、裏を返すと、海外には珍しい価値観なのだろう。 また、あらゆるものに「神」が宿るとの考え方もある。プロモーションビデオでは、人形が破壊されるシーンもあったが、日本では「人形供養」も珍しくない。おたき上げすることで、長年ともにしたものへの感謝を伝え、気持ちを整理する。今回の「破壊」はそうした過程を経ず、敬意に欠けているように見えたのではないか。