<16カードここに注目 センバツ交流試合>中京大中京の150キロ右腕に挑む智弁打線 常連校が甲子園初対決 第3日第1試合
2020年甲子園高校野球交流試合(日本高校野球連盟主催、毎日新聞社、朝日新聞社後援、阪神甲子園球場特別協力)が8月10日から、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で行われる。12日の第1試合で対戦する智弁学園(奈良)と中京大中京(愛知)の見どころや両チームの戦力、学校紹介、応援メッセージを紹介する。※全国大会出場回数は今春のセンバツを含む。 【中京大中京・高橋】智弁打線の前に立ちはだかる注目の150キロ右腕 ◇中京大中京・高橋はキレのある変化球も 智弁攻撃陣は2年生前川が軸 今年は中止したが毎年6月に練習試合を行っており、甲子園では初の対戦。中京大中京の最速150キロ超右腕・高橋宏斗を、昨秋の公式戦で計14本塁打を放った強打の智弁学園が打ち崩せるかが鍵だ。 高橋は6月の練習試合で自己最速を更新する153キロをマーク。ピンチになるとギアを入れ替え力強さが増す上、変化球のキレも良く打ち崩すのは容易ではない。ツーシームで打たせて取る術があり、右打者の外角に投じるカットボールやスライダーも効果的。ボール球に手を出すようだと攻略は難しい。 智弁学園は昨夏の甲子園で1年生ながら4番を務めた前川右京が軸。昨秋は打率5割8分6厘、6本塁打、17打点でチーム3冠王に輝いた左打者だ。1番の白石陸を中心に甲子園メンバー9人が残り、「つなぐ気持ちでやらせたい」と小坂将商監督。大振りにならないことを徹底し、得点を重ねたい。 中京大中京は2番・中島優、3番・中山礼都を中心に上位打線は得点力が高い。智弁学園は球のキレが持ち味の左腕・西村王雅と、球威のある右腕・小畠一心の両2年生が制球に気を配り、序盤からリードを許さないようにしたい。【藤田健志】 ◇“引退”の3年生が復帰 強打で挑む智弁学園 上位から下位まで打線に切れ目がない強打のチーム。昨秋の奈良県大会は5試合で計59安打55得点を記録し、うち4試合がコールド勝ちと圧倒的な強さで優勝した。近畿大会は4強止まりだったが、準決勝の大阪桐蔭戦では6番・山下陽輔(2年)の本塁打などで5点を奪うなど、高い実力が評価され、2019年夏に続く甲子園への切符を手にした。 昨秋公式戦8試合で14本塁打を誇る強力打線の中心は、1年時から4番を任される前川右京(2年)。チーム最多の6本塁打、17打点、打率5割8分6厘をマークした。食事と筋力トレーニングで体重を増やし、パワーアップを続ける。主将の1番・白石陸(3年)も13打点と勝負強い。 守備は、強肩の佐藤尊将(同)と、強気なリードの田上拓磨(同)の捕手2人が軸。投手陣の柱は、1年時からチームを引っ張る左腕の西村王雅(2年)と大型右腕の小畠一心(同)。左の荒川翔太(3年)、右の岡田皓一朗(同)らも控え、万全を期す。 コロナ禍でも、部員のほとんどが校内の寮で生活しているため、感染防止策を徹底しながら練習を続けてきた。しかし、夏の選手権大会中止が決まると「気持ちが切れた」瞬間もあった。3年生も一度は「引退」し、後輩とは別メニューの自主練習を続けてきた。 雰囲気が一変したのは、センバツ交流試合の開催が決まった日。突然の吉報にはじめは「キョトン」としていた選手たちも再び目標を手に入れ、「決勝のつもりで全力で勝ちに行く」と気合を入れ直した。3年生も全体練習に復帰し、走り込みと振り込みでなまった体を戻した。小坂将商監督は「もう何も言うことはない。頑張ってやれ、と言うだけです」。【萱原健一】 ◇智弁学園・白石陸主将の話 (中京大中京は)明治神宮大会で優勝している。自分たちも強豪校と試合がやりたかったのでうれしい。(チームの状態は)試合感覚とキレが戻ってきた。甲子園の決勝のつもりで頑張りたい。 ◇16年センバツで初の全国制覇 1965年に弁天宗を母体に設立された私立共学校。野球部も65年創部された。教育目標は「誠実・明朗」。甲子園には夏は68年、春は76年に初出場した。2016年のセンバツで初の全国制覇を果たした。OBに高代延博コーチ(阪神)、岡本和真選手(巨人)、岡崎太一捕手(阪神)ら。奈良県五條市。 ◇チーム一丸「胸借りるつもりで」智弁学園保護者会長・山崎剛さん 春のセンバツも夏の選手権もなくなった時は、親として悔しくもあり、悲しくもありました。息子が小さい頃から、家族が野球中心の生活を送ってきたのも甲子園を目標に頑張ってきたからなのに、春も夏もその機会を失ったからです。選手たちもコロナ禍で人生や社会の不条理を知ったと思いますが、なんとか息子たちのユニホーム姿を1試合でも多く見たい、という保護者の声が多く寄せられました。息子たちが活躍できる場を与えていただき、保護者も本当に喜んでいます。対戦相手は2019年秋の王者。胸を借りるつもりで、本番に向けて気持ちを高め、甲子園ではチーム一丸となって自分たちの力を存分に発揮してほしいと思います。 ◇目標に「無敗」掲げる神宮王者 投打に抜け出す中京大中京 歴代最多の春夏計11回の優勝を誇る甲子園常連校が掲げる目標は、もちろん「無敗」。センバツ交流試合でも勝ちにこだわる。 昨秋の愛知県大会、東海地区大会、明治神宮大会を制した要因は、「崩れない守り」と「切れ目ない打線」だ。エース右腕の高橋宏斗(3年)、左腕の松島元希(同)の「二枚看板」が投手陣を引っ張る。1月の練習で球速150キロを記録した高橋は昨秋の公式戦12試合に登板し、先発した8試合すべてで完投した。昨秋の公式戦全19試合でチーム失策は10と、主将の印出太一(同)は「守備から流れを作り、攻撃でたたみかける中京スタイルを貫きたい」と意気込む。 打撃は中軸の印出、中山礼都(同)、1番の西村友哉(同)ら上位陣を軸に、下位打線もつながりがあり、どこからでも得点を狙える。明治神宮大会では、準決勝で天理(近畿・奈良)に最大4点差をつけられながら逆転、サヨナラ勝ちし、決勝の健大高崎(関東・群馬)戦も逆転勝利するなど粘り強さがある。 優勝候補だった今春センバツだが大会中止が決まり、夏の甲子園の夢も断たれた。一時は目標を失いかけたが、交流試合の開催が選手たちの闘志に再び火をつけた。対戦する智弁学園に、エースの高橋は「打撃力があり、油断できない。マウンドに立ったら最初からトップギアで立ち向かう」。155キロ超の速球で相手打線をねじ伏せるイメージを描く。 昨年8月から続く公式戦「無敗」を途切れさせないためにも、愛知県の独自大会も優勝を狙う。ただ、センバツ交流試合はオール3年生で臨む予定だ。高橋源一郎監督は「プライドを持ち、今までやってきたことを発揮できる試合にしたい」と話す。【ガン・クリスティーナ】 ◇中京大中京・印出太一主将 (智弁学園は)甲子園常連校で力のあるチーム。モチベーションは上がっているし、練習試合を通して試合感覚も戻っている。このような状況の中で、高校野球から何かを発信したい。 ◇甲子園11回優勝、通算133勝は歴代最多 1923年に中京商として創立。野球部も同年に創部された。67年に中京に改称、95年から現校名。甲子園通算133勝(春55勝、夏78勝)、優勝11回(春4回、夏7回)はともに歴代最多。卒業生に日本代表の稲葉篤紀監督(元日本ハム)、フィギュアスケート五輪銀メダルの浅田真央さんら。名古屋市。 ◇最高の仲間たちと「たくましくなれ」中京大中京野球部父母会長・西村英樹さん 今季のスローガン「ワンチーム」の通り、投打がかみ合い一つにまとまった良いチームです。夏の甲子園が中止となり、目標がなくなった時はどうしようかと思い悩みました。でも選手たちは次の目標を公式戦勝利に切り替え、打ち込んでくれた。自分たちの力ではどうすることもできない、こんな経験は今後の人生でも起きるでしょうが、それを乗り越える力があると思っています。今後もコロナ世代として注目されるでしょうが、「可哀そう」ではなく、コロナ禍を克服し「たくましい」と言われるようになってください。伝統校の智弁学園は相手に不足なし。中京大中京で出会った最高の仲間たちと感謝の気持ちを持ち、全力プレーを見せてもらいたい。