悪口が楽しいのはなぜ? 親から子に教えたい「悪い言葉」を使うデメリット
子どもは時に、悪い言葉を口にしたがるもの。しかし、乱暴な言葉や悪口は、実は発した本人にとってもストレスになることがあるのだそうです。 「悪い言葉」が脳に与えるデメリットについて、『子育てのラジオ「Teacher Teacher」』のMC、福田遼さん、秋山仁志さんによる解説をご紹介します。 ※本記事は福田遼,秋山仁志『先生、どうする!?子どものお悩み110番』(PHP研究所)より一部抜粋・編集したものです
Q 子どもの口の悪さが気になります
YouTubeの影響か、子どもの口がどんどん悪くなっていきます。友だちとゲームをしているときなど、かなり言葉遣いがひどいです。どうしたらいいでしょうか?
A 「なしなしルール」でポジティブワードに変換!
なんで、「悪口」はダメなのか? ひとし:お子さんの口の悪さについてのお悩みですね。YouTubeからは影響を受けやすそうなイメージがあるね。 はるか:そうだね。今回は、お子さんにこんな語りかけをしたらいいですよ、という内容を具体的に紹介したいと思っています。(※1)実は僕たちのポッドキャストって、結構子どもも聞いてくれてるらしいんだよね。 ひとし:たしかに、「子どもと一緒に聞いてます」って言ってくださるリスナーさんもいるよね。 はるか:なので今回は、お子さんにそのまま聞いてもらうつもりでお話ししてみたいなと思います。じゃあひとしくん、子ども役をしてくれる? ひとし:はーい。 はるか:「悪口はダメ」「悪い言葉遣いは良くない」ってよく言われると思うけど、ひとしくんは、悪口ってなんでダメなんだと思う? ひとし:うーん、言われたお友だちが嫌な思いをしちゃうからかな? はるか:おぉ、相手の気持ちを考えられてるんだね。でも実は、悪口とか悪い言葉遣いって、周りの人だけじゃなくて、一番はひとしくん自身に悪影響があるものなんだよ。 ひとし:え、僕? はるか:そう。たとえば、お友だちとゲームしてるときに「クソー!」って言ったり、お友だちの悪口を言ったときって、ちょっと楽しい気分にならない? ひとし:うーん、なるかもしれません。 はるか:実はね、悪口を言ってるときは、脳の中でドーパミンっていう物質が出るようになってるんだ。だからお酒を飲んだり、薬物を摂取したときと同じように依存性があるものなんだよね。悪口を言えば言うほど楽しくなるし、もっともっとその楽しさがほしくなる。だから、悪口をちょっと言ってたら、どんどんひどい言葉にエスカレートしていって、いずれは悪口しか言わなくなる……なんてことが起きちゃうんだよね。 ひとし:へぇー、そうなんだ。 はるか:しかもね、悪口を言うと、ドーパミンだけじゃなくて、ストレスホルモン(※2)も出るようになってるんだ。これは体や脳に悪い影響を及ぼす物質で、ひとしくん自身がかなりしんどくなる。これを知ったら、悪口ってちょっと怖いところもあるなあ、と思わない? ひとし:うん。 はるか:逆に良い言葉を使うとどんな影響があるかっていうのもお話しするね。「うれしいな」とか「ありがとう」「最高!」とかって良い言葉を使うと、脳の中でベータエンドルフィン(※3)という幸せを感じる物質が出るんだ。これがたくさん出ると、病気から体を守ってくれる免疫力が高まったり、脳が活発に動いて物覚えが良くなったり、ストレスが解消されて気分が上がったりするんだよ。ひとしくんにとって良いことがたくさんあるから、これからは悪い言葉を使いたくなったら、良い言葉に変換するようにしてみようよ。 ひとし:うん、わかった!……という話をするわけか。 はるか:そうそうそう。学級で、脳の絵を描いたりしてこの説明をすると、子どもたちは「えー、知らんやったー!」って、かなりおもしろそうに聞いてくれるんだよね。さらに、「悪口を聞くほうも同じようにストレスがかかるんだよ」ってことも伝えると、クラス全体で「悪口や悪い言葉をなくそう」ってムードができあがるんです。 ひとし:なるほどね。 ※1 参考文献『心を育てる語り』(渡辺道治著、東洋館出版社) ※2 ストレスホルモン:ストレス刺激によって体内に放出され、ストレス反応を引き起こすホルモンの総称。代表的なものに、コルチゾールやアドレナリン、ノルアドレナリンなどがある。 ※3 ベータエンドルフィン:脳内神経伝達物質の一つ。痛みをやわらげる、ストレスを軽減する、多幸感をもたらすなどの効果が得られる。モルヒネに似た働きを持ち、「脳内麻薬」と呼ばれることもある。