カルロス・ゴーン氏、日産とホンダの経営統合に冷ややかな目 「うまくいくはずがない」と断言の真意
主導権争い、内部闘争…日産経営不振の原因を指摘 「本質を見失った」
日産自動車元会長のカルロス・ゴーン氏が23日、都内の日本外国特派員協会で開かれたオンライン会見に逃亡先のレバノンから参加した。ゴーン氏は日産とホンダの経営統合に辛らつな見方を示し、「うまくいくはずがない」と言い切った。 【写真】日産が誇る“怪物”3000万円の夢のスーパーカーに記者が試乗…時速300キロ「ガソリンの化け物」の乗り心地は? 会社法違反(特別背任)などで起訴され、保釈中にレバノンに逃亡してから5年。久々に日本メディアの前に姿を見せたゴーン氏は、ブランクを感じさせない舌鋒で、経営再建を図る古巣を語った。 日産の深刻な経営不振で、ホンダに救いの手を求めた形の今回の統合協議。来年6月の最終合意に向け、スキーム作りはホンダ主導で進められることが明らかとなっている。 「全体で売上高30兆円以上、営業利益3兆円を超える新価値を創造するリーディングカンパニーになることが可能」(ホンダの三部敏宏社長) 「お互いの強いところを伸ばしながら弱いところを補完してどう競争力を作っていけるか」(日産の内田誠社長) 両者は自動車業界を取り巻く厳しいグローバル環境に適応しようと、生き残りをかけた戦いに決意を示したが、ゴーン氏の見方は冷ややかだった。 「日産が他の誰かの助けを借りて自分たちの力を示そうとしている、つまり、自分たちだけではもうやっていけないということを意味している。今の状況を見るのはとても悲しい。というのも、産業界から見れば、アライアンスやパートナーシップを構想する時にまず最初に見るのは、2つのパートナー間の補完性だからだ。さて、ホンダと日産の補完性を見てみると、何もない。補完性はない。両社は同じ日本企業である。同じ分野で強い。同じ分野では弱い。どちらも非常に発達した技術を持っている。産業的な観点から見れば、重複はどこにでもある。だから、産業的には意味がない。将来的にはシナジー効果を見いだせるかもしれない。それは可能だが、それには計画が必要だ。研究する必要がある。そして今のところ、私たちはその可能性について何も知らない」 ホンダ側にこのような規模の提携・合弁経験が乏しいことにも触れ、「つまり、うまくいくはずがないということだ」と突き放した。 日産を苦境から立て直した自身の功績は誇示しつつ、ちょう落の原因として人材の流出を指摘。「日産社内の多くの人々が会社を去った。その人たちは有能な人たちだった」と話した。「興味深い、皮肉な名前を1つだけ挙げよう」と紹介したのが、来年1月に韓国の現代自動車グループの最高経営責任者(CEO)に就任するホセ・ムニョス氏についてだった。同氏はかつて日産の北米事業を統括し、ゴーン氏の後継者と言われていた。 「彼は私が逮捕された2週間後に日産を去った。彼は北米で一日の長があり、今日の現代は北米では日産よりはるかに大きくなっている。彼は最近昇格して現代自動車のCEOになる。ご存知の通り、彼は外国人でスペイン国籍ですが、彼の才能は韓国人に認められ、現代自動車のトップの座を与えられた」 ゴーン氏が逮捕された2018年を境に、日産と現代は明暗が分かれたと主張。「日産が過去5、6年にわたって直面してきた問題は、政治が主導権を握り、主導権を握ろうと陰謀をめぐらし、主導権を握ろうとする内部闘争が起こり、人々が本質を見失ったことだ。日産のトップマネジメントを見ると、率直に言って、彼らが現在直面している課題に立ち向かうだけの才能を備えているとは到底思えない。それが、『助けてください』とパニックモードになって、ある意味で降参している理由の1つになっている」と責任は経営陣にあると指弾した。