倉本聰、舞台に込めた思い「汚れてしまった人々の心を新鮮に洗濯」 若い演劇人ら富良野に集結
演出を担当した富良野塾11期生の久保隆徳さん(58)は、「その役はどんな過去を持ち、どんな部屋で暮らし、どんな街を歩いてきたのか。登場する直前には何を考え、どこから来たのか。そのすべてを緻密に想像し、膨らませることで、役は少しずつ地に足がついてくる」といいます。
■新たな一歩を踏み出すきっかけに
久保さんは続けて「倉本先生は、『木』に例えて話してくれました。『木は根っこがなければ立たない』。どこかで見たことがあるような、表面的で手垢(てあか)のついた演技ではなく、役の奥深くにある『根(人間)』を感じさせる、地に足のついた演技を目指す―それが富良野塾の教えだったように思います。(中略)この地で過ごした時間が、参加した役者たち一人ひとりの中に新しい根を張り巡らせ、新たな一歩を踏み出すきっかけとなることを、僕は心から願っています」と思いを込めました。
■汚れてしまった人々の心を新鮮に洗濯
倉本さんは『新版・富良野警察物語』について、「人間がいる以上ドラマはおこる。人々はみな懸命に、大真面目で生きる。だがその大真面目な生き方は、本人が真剣であればある程、俯瞰的、ロングの目線で見ると喜劇である。チャップリンの唱えた、これが真正の喜劇である。(中略)テレビも映画も舞台も同じ。昔人々は感動を求めて劇場に集り、良い顔になって家路についた。今は感動でなく快感を求めに劇場に集い、家に着く頃にはもう忘れている。舞台劇場とは元々そういうものではなく、日常の暮しで汚れてしまった人々の心を新鮮に洗濯する仕事である。そういう洗濯の一助になればうれしい」(原文ママ)とコメントしています。