「インボイス制度」は百害あって一利なし!? 消費税のウソとホントを暴き出す!
――19年の増税時に始まった軽減税率によって、仕入額控除の計算が複雑化したために、インボイス導入が必要になったともいわれています。 犬飼 軽減税率導入からインボイス方式開始までの4年間で、税務処理が破綻をきたしたという話を聞いたことはありません。また、政府が「旧来の帳簿形式による税務処理で適正な課税ができていない」というデータを出したこともありません。 むしろインボイス導入で企業の経理担当者に重い負担がかかるようになり、市民団体による意識調査では経理担当者の33%が転職や退職を検討しているという結果が出ています。 ――「預り金」でないばかりか、実務の負担が増しているのであれば、インボイス導入の根拠が崩れてしまいますね。 犬飼 ええ。それに、導入前は「インボイスで影響を受けるのは零細事業者やフリーランスだけ」という声もよく耳にしましたが、実際は営業や仕入れに関わる部署の方でも、経費や仕入れ額の精算が煩雑化しているはずです。 また、長年にわたって信頼関係を築いてきた取引先がインボイス発行事業者でないばかりに、泣く泣く取引を停止しなければならなくなった、そんなケースもあちこちで起こっています。会社員の方にとっても、利益のない制度であることがわかるのではないでしょうか。 そもそも零細事業者にとってインボイス方式は、実務上の負担が大きくなるだけではなく、納税額の減免がなくなることで事実上の増税となり、事業の継続を難しくさせています。かといってインボイスに登録しなければ、取引を打ち切られる可能性も高い。まさに地獄のような選択を強いている制度なのです。 ――複数税率化といっても8%と10%の2種類ですから、インボイス方式を導入しなければならないほど複雑な税制でもないように思えます。なぜ政府は導入を急いだのでしょうか? 犬飼 国会でも何度も答弁されていますが、政府や財務省から導入の根拠は示されず、複数税率による「不適正な課税」への調査すらされていないことも明らかになっています。 私自身は22年10月の首相会見で、フリーランス記者として岸田首相に「不適正課税以外の導入根拠があるならご説明ください」と質問していますが、首相は「ちょっと今、私、手元で承知しておりませんので」と言った後、質問とはほぼ無関係の回答をしどろもどろにするだけでした。 軽減税率にもインボイスにも、政府の説明とは別の導入理由があったと考えざるをえません。