【プレミア12】台湾と日本の明確な「温度差」 スコアだけでは見えない〝最大の敗因〟
井端弘和監督(49)率いる侍ジャパンが「プレミア12」決勝・台湾戦(東京ドーム)に0―4で敗れ、同大会準優勝に終わった。優勝筆頭候補として挙げられた井端ジャパンは開幕から無傷の8連勝で決勝を迎えるも、ふたを開けてみれば大一番で台湾相手に完敗。「波乱」と評される一方で、日本の敗因にはスコアからだけでは分からない明確な理由もあった。 【写真】表彰式で何とも言えぬ表情の井端監督 下馬評を覆す台湾の勢いに屈した。先発した若きエース・戸郷(巨人)が4回まで6奪三振の好投で台湾打線を封じ込めたかに思えたが、5回に先制ソロを含む2発を浴びて一挙4失点。打線も台湾のエース格リン・ユーミンら好投手を前に手も足も出ず零封負けを喫した。 井端監督は試合後に「選手は非常によくやってくれた。大会を通じて精神的にも肉体的にも強くなった」とナインを評価する一方で「負けたのはすべて私の責任」と自らを責めた。 日本は今大会での優勝最有力と見られていただけに「日本、台湾に敗れる」の報は日本国中の野球ファンに衝撃を与えたが、日本球界にも精通しているある台湾メディアの記者は、開幕前から「日本と台湾の戦力はある意味『=(イコール)』ですよ」と分析していた。 「日本も台湾も、メンバー選出に際して本気を出していないじゃないですか。大谷らメジャー組が不参加なのは想定内だったとはいえ、日本も台湾も出場予定の主力選手たちが故障を理由に軒並み出場辞退。お互いにガチンコのメンバーではなく苦しい状況だった」(前出台湾メディアの記者)。 侍ジャパンはW大砲の村上(ヤクルト)&岡本和(巨人)らが故障等によりメンバーを辞退。台湾チームからも一部の主力選手らが辞退するなど互いに完ぺきなメンバー編成を組むことはできなかった。そんな同じ状況下でも異国の地で奮闘を続け、日本を下して悲願の初優勝を果たした台湾。敗れた日本との決定的な違いは、今大会における「圧倒的な温度差」にもありそうだ。 優勝を果たした台湾では、褒章に関わる規定「国光体育褒章頒発要点」に基づき選手1人当たり700万台湾ドル、日本円にして約3310万円もの大金が支払われる予定。これは台湾の野球選手の平均年俸をはるかに上回る金額で、日本が世界一を達成した昨春のWBCで選手1人当たりに支払われた約600万円の報奨金と比べても桁違いと言える。 「政策」として大々的に定められた金額が物語る通り、今大会での優勝は台湾球界の悲願でもあった。ある台湾の大手一般紙の記者は「台湾にとってはスーパーラウンド進出がまず第一の目標でした。そこから決勝に進出し、さらには日本との対戦ということもあり、台湾国内の注目度も過去最大級。ウチの新聞でも連日一面で報じるほど異例の扱いです」とその注目ぶりを語っていた。 一方で対照的な状況下にあったのが日本。WBCより位置づけが下となるプレミア12においては次回開催のWBCを見据えた若手選手の育成と見定めが主な目的となっていることからも、勝利への執着心も相対的に低下する。過去に代表経験のある選手の一人は「優勝したい気持ちはもちろんあるけど、それ以上に出場することによるリスクの方が大きい。メジャースカウトへのアピールをしたい選手はともかく、リスクに見合う見返りがあるわけではないし、ケガをしないで終えることが最優先の目標になってしまう」とリアルな本音をこぼしていた。 当然、侍ジャパンの選手たちも優勝を最大目標にプレーした一方で、日本と台湾における今大会に向けた熱量には明確な差があったことは確か。勝敗を決めた「4点差」はそこから生まれたのかもしれない。
東スポWEB