大型移籍連発のラグビー・リーグワン。懸かる期待と抱える課題、現場が求める改革案とは?
「プロなら移籍するのは当たり前。ただし…」
リーグが新時代に合った枠組み作りを求められているほか、選手にも新時代に合った決断力が求められる。 そう暗示したのは沢木敬介。横浜キヤノンイーグルスの監督として、就任4季目で2季連続4強入りのプロコーチだ。2015年には日本代表のコーチングコーディネーターとしてワールドカップ・イングランド大会で3勝を挙げている。 話をしたのは5月下旬。都内の本拠地で、プレーオフの3位決定戦への練習をし終えたタイミングだ。選手の出入りが活性化する現状について聞かれると……。 「プロなら移籍するのは当たり前だと思う。多分、うちからも何人か出ていくだろうけど(その後10人が移籍)、それは出場機会とか、お金とか、理由はいろいろある。なかでも出場機会を求める選手って、(もともとの所属先で)成長しているからいろんなチームから必要とされる。新天地に行って、ちゃんと自分が望んでいるような起用法をしてくれるんだったら、それは正解じゃない?」 職業人として、プレーヤーが自分の仕事の価値を上げたい気持ちは十分に理解できるという。 ただし、ここから「個人的には……」と、角度を変えて説く。 「一時の金で動くのも大事だけど、(チーム選びでは)どこでやれば成長できるか、どういう仲間とやりたいか、どういうラグビーがやりたいかを考えてから判断したらいいんじゃないかと、俺は思う」 限られた競技生活をどんな形にするか。それを資産形成の視点で考えるのもよいが、ラグビーの愛好家として考えても充実感を得られるのではないか。 沢木が伝えるのは、そういう趣旨だ。 「(昨今の変化は)しょうがないよ。(実質的に)プロの世界だから。けどさ、絶対、環境を変えて後悔する選手も出てくる。それに、クラブが評価する時の基準も変わってくるんじゃない? 別にお金をバーッと払っていろんないい選手を採ったって、それで勝てるチームになるわけじゃないし……」 締めの言葉が、意味深長だった。 「……だから、自分で決めるのが一番いいよ」 <了>
文=向風見也