大型移籍連発のラグビー・リーグワン。懸かる期待と抱える課題、現場が求める改革案とは?
新シーズン開始まで2カ月を切ったNTTジャパンラグビー リーグワン。12月21日に開幕する2024-25シーズンに向けて例年以上に多くの選手の移籍が取り沙汰され、話題を集めている。そんななか、「カテゴリーA」の海外出身選手の市場の高騰化や、若手選手を手塩にかけて育てたチームに対する対価がないことなど解決すべき問題も多い。現場から提案の声が上がる解決策とは? (文=向風見也、写真=森田直樹/アフロスポーツ)
「移籍する人は移籍すると決まっていて、嘘は嘘」
フェイクニュースに踊らされてはいけない。そう思わせる出来事が日本のラグビー界であった。 今年5月までの国内リーグワンが終盤戦に差し掛かった時期、SNSでオフの移籍に関する情報が錯綜。まことしやかに図表化する発信者もいた。 ちょうど行われていたプレーオフ、つまり日本一決定戦には、噂が真実なら終戦後に「大量流出」にさいなまれていたとされるチームも出場していた。 興味深いのは、そのチームのベテランの一人がかように話したことだ。 「僕らも、内々では『あの選手どこ行くらしいよ』みたいな話を聞いてはいます。だから世に出ている話が半分、嘘だともわかる」 そう。複数の代理人やクラブ関係者の話を総合すると、それらの情報群が「水面下の打診があった程度の情報を耳にした人間が、裏を取らずにそのまま流した結果」であったと想像できる。件のベテランは続ける。 「むしろ、情報に対するファンの方々の反応が選手に影響を及ぼすかもしれないからと、ヘッドコーチは僕らに『気にするな』と言っていました。移籍する人は移籍すると決まっていて、嘘は嘘だと決まっている。そのうえで、いま目の前の試合に集中する――」
各々がよりよい環境を模索するのは当然のこと
シーズン終了後、大物の去就が賑わせたのも事実だ。 日本代表の齋藤直人は東京サントリーサンゴリアスからフランスのトゥールーズへ挑戦。同じくジャパンで長らく司令塔を務めた松田力也は、一昨季まで国内2連覇のパナソニックワイルドナイツからトヨタヴェルブリッツに移った。 クラブ単位では、1部昇格を果たした昨季から「3季以内で優勝」をミッションとする三重ホンダヒートが6月に21人の退団と14人の加入を発表。新しいメンバーには、東芝ブレイブルーパス東京にいた日本代表経験者の中尾隼太もいた。さらにヒートをやめた選手の中には、別のチームのアキレス腱となったポジションを埋めるような移籍をする者もいた。いまでは12月からの新シーズンへの補強は概ね済んでいそうだが、来季以降もこのトレンドは収まらないと見られる。 この業界には、企業に在籍する社員選手とラグビー専業のプロ選手が混在する。ここで後者、もしくは後者を目指す者が、自身のさらなる成長のためであることはもちろん、出場機会や高額なサラリーを求めてプレー環境を変えるのは自然なことだ。選手の契約を担う代理人が、クライアントとの契約の切れ目に大きなオファーを提案することだってある。 誰しも、一生、仕事でアスリートができるわけではないのだから、各々がよりよい環境を模索するのは当然のことだ。