ホンダ、ソニー、第一生命…コンサルティングを生かして躍進した企業の共通点とは?
年々、規模が拡大しているコンサルティング市場。戦略立案を手がける伝統的な外資系コンサルファームに加え、総合系・会計系、国内系、さらにはベンダー系まで、コンサル業界は百花繚乱(ひゃっかりょうらん)の様相だ。一方で、コンサルの質や使う側の姿勢が問われ始めている。本連載では、ボストン コンサルティング グループ(BCG)の元代表・堀紘一氏と元同社のコンサルタント・津田久資氏が、コンサルティングのあるべき姿を考察した『本物のコンサルを選ぶ技術』(堀紘一、津田久資著/クロスメディア・パブリッシング)から、内容の一部を抜粋・再編集。失敗しないコンサルの選び方と付き合い方を解説する。 第3回は、成果を出すために有効なコンサルタントとの付き合い方を紹介する。 ■ 賢いつき合い方(1) 戦略決定に参加する コンサルタントを雇ったから、あとは彼らに任せていればいいという姿勢では、よい結果は生まれない。「一緒に考える」ことが大切なのだ。 戦略策定に関わるとか、業務改善のために、自分たちはこう考えているとか、活発に意見を出して、一緒に議論する。 戦略決定に関わるには、企業側も「結論仮説(問題や原因、解決法がこれではないかという仮説)」を持っていることに越したことはない。 結論仮説があることで、議論はより具体的で生産的なものになるはずだ。 コンサルタントに何とかしてもらおうという受け身の姿勢ではなく、自ら問題設定、問題解決を行う積極的な姿勢を求めたい。 議論に参加し、結論に至るまでの「考え方」を知っていれば、違った問題や課題が生じても対応することが可能だ。考え方を知らず、ただ「答え」を知っただけでは、応用は利かない。 結論に至った過程を知っているのと、知らないとではその後の取り組み方に大きな差が生まれるだろう。
■ 賢いつき合い方(2) 経営者がリーダーシップを発揮する 企業が大きく変わるためには、経営者がリーダーシップを発揮する必要がある。最近はボトムアップも重視されるが、わが身を切る覚悟がなければ改革などはできない。それには、強いリーダーシップが不可欠だ。 JAL(日本航空)の再生では、稲盛和夫さんという伝説的な人物がトップに立ったが、それくらいのレジェンドでなければ、あのような会社を再生することはできなかった。 私自身、コンサルティングをする中で、癖が強くリーダーシップの強いトップほど、成果も大きかったという実感がある。 ホンダの川本さんにしてもヒロセ電機の酒井社長にしても、ときにケンカ腰になるほどやりあった。逆に言うと、それくらい真剣に向き合えるトップは、自分の考えを持っていたし、リーダーシップも強かったと思う。 最初こそ対立しても、こちらの意図を理解し、いざ実践するとなったときの判断と実行のスピードは早い。 経営者のリーダーシップ如何で、コンサルの成果は決まるのである。 ■ 賢いつき合い方(3) 無難なC案を選ばない せっかくコンサルタントを雇っても、彼らが提案したものを実行しなければ意味がない。私は最終プレゼンの前に、A案、B案、C案の3つを用意する。A案は企業変革のために最も有効な案だが、その分改革が必要で、痛みも伴う内容だ。 それに対してC案は、企業側の痛みは少なく受け入れやすい案だ。しかし、その分効果は少ない。B案は、A案とC案の中間だ。 残念なことに、私の経験では8割以上の企業が、最も無難で効果の薄いC案を選択する。安くはないコンサルタント料を払ってC案を採用するならば、そもそもコンサルタントを雇う必要もないのではないかと思ってしまう。そんな案なら、おそらく社内でも考えつくはずなのだ。 数は少ないけれど、A案を採用してくれる企業もあった。それがホンダとかソニー、ヒロセ電機、カプコン、第一生命などだが、いずれもその後躍進している。 残念ながら多くの企業は、組織の論理の中で、結局は無難な案を採択し、思うような結果を出せていないのが現状だ。 コンサルタントを雇うのであれば、それなりの覚悟が必要だろう。