光る君へ 吉高由里子と柄本佑がすてきすぎた 脚本の大石静はラブストーリー意図せず
夫のいるまひろが、道長の子供を身ごもる展開が描かれた。「源氏物語は、そもそも密通の物語という要素がある」と指摘する。若き日の光源氏は義理の母、藤壺と罪を犯す。その後、栄華を極めた源氏だが、正妻に迎えた女三宮に密通されてしまう。源氏の死後を描いた「宇治十帖」では、浮舟と匂宮が密通した。
「密通が大事な要素になっているから、書き手も密通しちゃうのがいいんじゃないかと話し合っていました」。すぐに決定したわけではなく、チームで話し合いを重ね、大河の主人公が不義の子を産む、という展開が決まった。
紫式部を描く上で避けられないと感じていたのが「源氏物語の誕生」だ。
劇中では、一条天皇と、道長の娘・彰子を結びつけるため、道長がまひろに物語の執筆を依頼したという流れだった。
当時、紙は貴重だった。時代考証の倉本一宏さんの考えでは、源氏物語に必要な大量の紙は、紫式部の身分では手に入らないということだった。「道長のバックアップがあり、道長のオーダーでなければあんなに長いものを延々と書き続けることはなかったとおっしゃっていたので、やっぱりオーダーはあったということから発想してああいう物語を作りました」と明かす。
■人生はむなしい
「この世をば 我が世とぞ思ふ 望月の 欠けたる ことも なしと思へば」
注目を集めたのが、歴史上有名な、道長が詠んだ望月の歌だ。道長の傲慢さが込められた歌だととらえる人もいるが、今作では、誠実でおだやかな道長が描かれてきたため、「こよいは良い夜だ」という解釈がされた。
「道長は表面だけを見ると3人の娘を妃にして、絶頂と言えば絶頂。だけど、私たちのドラマでは娘たちは、父に批判的。そういうむなしい気持ちを抱きながら、『今日はいい日だと思いたい』っていう気持ちで描きました」
この「むなしさ」は繰り返し描かれてきたテーマのひとつだ。源氏物語が単なる恋愛物語ではなく、人生の難しさ、むなしさを描いたという解釈は制作チームで共有していた。