大井川鐵道に撮り鉄ズラリ 蒸気機関車C10-8とC56-44 が重連運転
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「動く鉄道博物館」 として鉄道ファンから親しまれている静岡県の大井川鐵道で蒸気機関車C10-8とC56-44の重連運転などが行われ、大井川本線(金谷ー千頭)沿線や終着駅の千頭駅(川根本町)は、フル装備のカメラ機材をもった「撮り鉄」などで賑わった。大井川鐵道が毎年開催しているSLフェスタの企画として行われた。
大井川鐵道では現在、SL4両が営業運転をしており、うちC10-8とC56-44の2両を連結して客車を牽引する重連運転が行われた。C10-8は昭和5年製造の川崎車両製の蒸気機関車。大井川鐵道によると、現存するC10形は8号機だけ。そのため貴重なSLとして人気が高いという。C56-44は昭和11年製造の三菱重工製。昭和16年にタイに戦時輸送のため送られ、終戦後はタイ国鉄で使用されたが、その後、昭和54年にタイから帰国し大井川鐵道に入線した蒸気機関車だという。
終着の千頭駅にほど近い大井川にかかる橋の周辺では、鉄橋をわたるSL重連をカメラにおさめようと、望遠レンズをつけた一眼レフカメラの三脚がずらりと並んだ。山間にこだまする汽笛とともに白煙をあげてC10-8とC56-44が現れると次々とシャッターが切られ、シャッター音が周囲に響き渡るほど。 その後、千頭駅でC10-8、C56-44さらに昭和15年製造、日本車両製のC11-190の蒸気機関車3両を横並びにしての撮影会も行われ、駅構内には撮り鉄の人垣が出来た。SL重連のほか昭和期に活躍した電気機関車の重連運転も行われた。 三重県からきたという男性は「小学6年生から撮りはじめて6年になります。北海道から九州まで、毎月、鉄道写真を撮りに行っています。大井川鐵道は2回目。今日はSLより電気機関車をメインに撮りにきました」と話していた。
大井川鐵道は大正14(1925)年に創立、沿線住民の足として鉄道事業を担ってきたが、昭和51(1976)年に日本で初めて蒸気機関車の動態保存を行ない、現在は蒸気機関車をはじめ、昭和期に製造された近鉄や南海、東急で製造された電車、客車などのほか、期間限定ながら「きかんしゃトーマス 」の意匠をまとった蒸気機関車「トーマス号」と「ジェームス号」を運行。さまざまな蒸気機関車や電車が見れて、乗れる「動く鉄道博物館」として広く知られている。 SLフェスタは、大井川鐵道ファン、SLファン、鉄道ファンへの感謝祭として毎春行われているもので、千頭駅をメイン会場にさまざまな企画が催される。企画の中にはベテラン運転士がサポートしてSL運転を体験できるものも。大井川鐵道ではSLを、ハンドルとブレーキを担う役割、石炭をくべて蒸気をつくる役割、運転機器が左寄りのため進行方向の右前方を確認する役割の3人が連携して運転している。 26年間にわたり大井川鐵道のSLを運転してきたベテラン運転士の杉本真さんは「運転室は、夏は60度にもなるので体調管理に気をつかいます。かまたきをする人は体力がないとできません。3人のチームワークで運転しています。乗っていただいたお客様から『楽しかった』などと言われると嬉しいですね」と話していた。